過去ログ - 速水奏「KANADE DANCE]
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1:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:45:04.98 ID:hEAb85aj0
速水奏さんがちゅーってやったりやらなかったりするやつです。
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:45:40.62 ID:hEAb85aj0
スマートフォンに耳を添わせれば、あの人の声が聞こえる。
私が挑発的なことを言ったら、電話口の向こうでは小さくため息をつく。
3:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:46:32.47 ID:hEAb85aj0
一人の時間は、ちょっとだけ好き。
街や人をただただ見ているのは一人でしか出来ないし、人の海の中にはどれだけのドラマが潜んでいるんだろうか。
それを想像しているだけで退屈しない。
4:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:49:42.29 ID:hEAb85aj0
「ねぇ、プロデューサーさん」
「なんだよ、もうPV撮影終わったのか?」
5:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:53:52.98 ID:hEAb85aj0
耳元からは無機質なビープ音が聞こえて、また独りになる。
名残惜しくて画面を眺めたって、買ったときから変えてない壁紙が映るだけ。
6:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:55:13.18 ID:hEAb85aj0
イルミネーションの灯りが届かないベンチで、道を行く人を見ていた。
中には手を繋いだカップルもいて、大勢の中でも確かに繋がっていられる関係が羨ましく思えた。
彼らはすぐに人の波に呑まれる。
7:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:55:45.93 ID:hEAb85aj0
「すぐに行く」って、私はどれくらい待てばいいの? 白い息をはいて、また冷たい空気を吸う。
三度繰り返して、もう一度アーケードを眺めていた。
8:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:56:49.12 ID:hEAb85aj0
「まぁたそんな暗いところで。クリスマスはお嫌いですか?」
「そんなことないわよ? ただ少し、目が眩んだだけ」
9:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:57:24.37 ID:hEAb85aj0
呆れたような声が、スマートフォンに当てていない方の声からも聞こえる。
茶番はお仕舞い。
通話が切れて、ようやくプロデューサーさんの顔が見えた。
10:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:59:08.44 ID:hEAb85aj0
わたしたちの距離は今、せっかく手のひらで0になってるんだから、勿体無いじゃない?
人の繋がりを感じる距離は半径五メートルだって誰かが言っていたけれど、0になったときはどうなってしまうんだろう。
11:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 02:59:52.86 ID:hEAb85aj0
手が触れるか触れないかの距離が、今の私には限界なんだ。今はそれで諦めている。
半径五メートルの中にいる間は、間違いなく繋がっている気がするから。
12:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:00:49.14 ID:hEAb85aj0
事務所には、年少組が飾り付けた大きなクリスマスツリーが立っている。
24日には盛大にパーティーをするみたいで、料理自慢たちが今から準備を始めていたっけ。
きっと大人たちはシャンパンを持って、大騒ぎするんだろう。
13:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:01:45.21 ID:hEAb85aj0
「用が終わったら声掛けてくれよ。俺は今から事務作業するけど、言ってくれたら送るから」
事務所に用があるって、嘘をついた。
ここはあの人がいて、暖かい場所だから、一緒にいたくなっただけ。
14:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:02:25.02 ID:hEAb85aj0
でも彼はイヤホンを取り出して、私なんかいないみたいに仕事を始めようとする。ちょっと、それは無いんじゃない?
音楽で耳を塞いでしまうなんて、失礼しちゃうな。
彼の左耳からイヤホンを取って、私の左耳に付けた。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:03:26.19 ID:hEAb85aj0
「用がないなら帰れよ……」
「こんな美人侍らせて、不満?」
16:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:04:17.50 ID:hEAb85aj0
彼はそう言うと、まっすぐパソコンのディスプレイに向き合った。
彼の横に座って、黒い瞳に反射した光をただ眺めていた。
仄かで淡いそれは街のイルミネーションよりずっと綺麗で、ずっと暖かい。
17:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:05:02.63 ID:hEAb85aj0
私は悪戯を思いついた。かわいい、ちょっとした悪戯だ。
左手の人さし指と中指をデスクの上に立てる。
18:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:05:58.00 ID:hEAb85aj0
不意に彼の手首に爪が当たって、プロデューサーさんは私の方を見た。
ディスプレイの光はもう映していない。
彼の瞳は私を映しているはずだけど、よく見えなかった。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:07:16.15 ID:hEAb85aj0
彼も指を二本立たせる。私よりずっと大きい手。
指もその分長くて、私の指と並んで立っていると、いつもの私たちの姿によく似ていた。
20:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:08:28.12 ID:hEAb85aj0
うねるベースの響きに合わせて、ゆらゆら二人で踊る。
細かいステップを踏んだら、向こうも同じリズムでデスクを叩く。
21:名無しNIPPER[saga]
2015/12/23(水) 03:10:12.16 ID:hEAb85aj0
賛美歌のようなコーラスが歌われる。
絡んだ指を見て、彼が本当に私の腰を抱いているかのような錯覚をした。
貴方に抱かれたまま右に、左に揺れて、イヤホンから流れる曲に身を任せる。
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