51: ◆ZFgfLAc.nk[saga]
2016/01/10(日) 20:43:59.60 ID:hJmSEwpR0
無意識的に危機感を感じ、一歩引いた時にはもう遅かった。
腕を掴まれ、三本線の入った肌色のモノが視界に飛び込んで来た。
如月には意味がわからないが、鈍い痛みから、殴られたという事は感じ取れた。
顔に向かって飛んでくる。ニ発、三発、四発。
頭を狙って振り下ろされる。五発、六発、七発。
もうなんだかわからない。八発、九発、十発。
自由な片手で頭を庇うが、今度は下半身に痛みが走る。
拳より固く、大きい痛み。
蹴られていると感じた瞬間、女性的な恐怖が頭の中を支配する。
「司令官、助けて」
思わず口に出た言葉に男達は動きを止めた。
「しれいかんン?」
「司令官って提督の事じゃね?」
「あぁ、あの全然出てこない引きこもりのオタク野朗か?w」
男達が何かを思い出したように笑い出した。
「おいお前、提督のクビ飛ばしたくなかったらなあ、抵抗なんてするんじゃねぇぞ?」
「お前が本当に艦娘ならよぉ、知ってるだろ?」
「『艦娘が一般市民に手を出す事は、どんな事があっても許されない』」
「お前が本当に艦娘なら、その通りにしてみろよぉ!!」
軍規の話は如月も覚えている。しかし軍規があろうと無かろうと彼女に抵抗はできなかった。
彼女は相手に対して恐怖していた。
何をしてもどうしようもないと考えてしまった。
今まで死にそうになった事が無かったわけではない。
深海棲艦との戦いはいつも死と隣り合わせだ。
だけど、だとしても、今回の恐怖は深海棲艦と戦う時の比ではなかった。
なぜなら相手は『笑っているから』。
今までの相手のように機械的に破壊するのではない。
今までの相手のように何かを背負っている様子もない。
歯を剥き出しにして涎を垂らして裏返った声で笑い声を上げながら殴りかかってくる。
躊躇なく腹部に蹴りを入れてくる。
それが如月を何よりも混乱させ、恐怖させた。
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