10: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 02:16:04.60 ID:d/9JR/ulo
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書院を模した個室へ、文香と一緒に通される。
「お酒は召し上がられますか。翌日のご都合も、あるでしょうから……」
「是非ともいただこう。ただ、昔みたいにザルのマネはできないが」
文香との話が長くなると思って、俺はあらかじめ駅近くの宿をとっていた。
それで、いい雰囲気の店に連れて行ってもらったのだから、飲まない法はない。
「プロデューサーさんは、志乃さんや楓さんに酒量で張り合っておりましたね」
「最近は、もうさっぱりだ。スタドリとかで長年腎臓をいじめてきたのが祟って、
いろいろな意味で無理の利かない体になってしまったから」
若かりし頃は――文香がそばにいた頃は――俺も無茶をしてきた。
そういえば、俺はアイドル時代の文香しか知らないが、文香もその頃の俺しか知らないのだった。
あちこちガタの来てる俺の姿を見て、年食ったなぁとか思ってるんだろうか。
「プロデューサーさんは、今もご活躍のようで。詳しくは存じませんが、お噂は伺っておりますよ」
「そうかな。あの頃のように、たくさん担当して馬車馬やってた頃に比べると、大人しいもんだよ」
俺の返事に、文香は小首を傾げた。
「そうでしょうか? 私、映画リメイクを知らせてくださったあの方から、ご教示いただいたのですが。
プロデューサーさん、もうじき美城プロのアイドル部門のトップに就かれるそうですね」
俺は、映画リメイクの話を知らせてきた彼の顔を思い出した。
「美城プロの次期部門責任者を、長野くんだりまで呼びつけるなんて……だとか。
ここまで露骨な言い方ではありませんでしたが、あの方には呆れられましたよ」
「他人のことだからって、勝手にペラペラしゃべって……」
俺は、彼との付き合いを考え直すことを決めた。
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