26: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 17:43:21.08 ID:d/9JR/ulo
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「……プロデューサーさんは、あの時も、今でも、本当にお優しい方ですね」
俺が言葉を詰まらせると、文香が口を開いた。
「プロデューサーさんが声をかけてくださった当時……確か、私は19歳でしたね。
学生だったとはいえ、自分の選択へ責任を持たなければならない年齢です。
……私がアイドルになって、それで人生設計がどうなったとしても、それは私の責任でしょう」
だから、俺が『それ』を気に病むことはない、と。
文香のいうことは、たぶん正論なんだろう。
少なくとも、正論に聞こえる。
「……文香、その理屈は、アイドルが言うならともかく……
アイドルの責任者たる担当プロデューサーが言っちゃあ、おしまいだ」
でも、心の底までそうやって割り切れるなら、
こちとら15年前のことなんか引きずっちゃいない。
文香は黙ってしまった。俺は沈黙に肺腑を締め上げられて、息もできない。
すぐに耐え切れなくなって、もう楽にしてくれ――と、文香に言葉を投げつける。
「逆に聞くが、文香は……アイドルになったこと、後悔していないか」
俺の問いに、文香は眉根を歪めた。
まるで、胸の病に苦しむ西施の顰(ひそ)みだった。
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