30: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 17:45:42.03 ID:d/9JR/ulo
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「先の見通しを立てられない状況が、とても不安でした。
芸能活動をしていた頃は、貴方が導いてくださったから、不安も乗り越えられました。
しかし、引退してからは、もう貴方は道を指し示してくれない。
そんな日々が続くと、私の心根もなんだか拗(ねじ)けてきて……
お分かりになられますか。
貴方の元を離れて何年も経って、私もいい年になったのに、
経済的にも精神的にも、過去の貴方に頼りっぱなしだったのです。
貴方に、合わせる顔がありませんでした」
文香の声も姿態も、俺が今まで見たこと無いほど痛ましく、
俺の堪え性のなくなった涙腺が、じりじりと騒ぎ出した。
「……お笑いくださっても結構です。
笑えないなら、せめて詰(なじ)っていただければ幸いです。
私の都合で、貴方に長い間、不義理を致しましたから……」
俺は口元を無理に広げようとして、表情筋を引き攣らせてしまった。
さぞ滑稽な表情だったろう。
これじゃ、笑うんじゃなくて笑わせに行ってるみたいじゃないか。
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