過去ログ - モバP「15年ぶりの鷺沢文香」
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33: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 17:48:49.10 ID:d/9JR/ulo



「貴方に教えていただいたことを活かして、私なりの道を拓くことができたんだ、と。
 私が貴方の下で過ごした美城プロでの日々は、ただ私が楽しかっただけの徒花ではない、と。

 15年も経って、初めて誰かに認めてもらいました。
 
 それが嬉しくて、貴方に伝えたくなったのです」



本当に文香の言う通り、俺がアイドルや女優を文香へやらせたことが、
今の文香の地歩の、人生の、礎となっているのか。

そう信じられたら、そりゃあ俺だって悪い気分はしない。
ただ、なんだか、文香が俺に気を遣って、俺の功績を大袈裟に言ってる気がしなくもない。



そんな俺の内心を見通したのか、文香はさらに追撃を見舞ってきた。

「大学経由で貴方から連絡があって、それで返信を考えている時……
 貴方が来てくれるか、来てくれないか……どうかなと思いながら、返事を書きました。

 どちらでも構いませんでした。
 来てくれないなら、御礼は私の自己満足ですから、一筆書いて済ませるつもりでした。


 けれど、貴方は来てくださった。
 それは貴方が、未だに私のことを、東京から長野まではるばるやってくるぐらい、気にかけてくださっているということ。

 それは嬉しいのです……が、その『気にかける』というのが、
 負い目とか、後ろめたさとか、おそらくそういう感情なんだろうと、
 それを抱えて、貴方は長野にやってくるだろうと……そう思っていました」



鮮やかに、図星を指された。
こうまでピシャリとやられると、もう文香には敵わない気がしてくる。
文香の言い様が大袈裟だ……なんて疑問を差し挟むのが、くだらないと思えてくる。

アイドルだった頃は、俺の後ろをヒヨコみたいにくっついて歩いてたのに。
いつの間にか立派になって、俺より早く過去と向き合っていた。



「だから、そんな貴方に、15年間、申しそびれていた言葉を、改めて……
 貴方の下でアイドルとして活動できたこと、本当に感謝しています」



文香の、目遣いが、首や手の角度が、吐息が、言い回しが、間が、伝えてくる。
女優であった頃の流儀を残しつつ、おそらく教壇の上でさらに磨かれた文香の所作が、伝えてくる。
文香の伝えんとする心を、俺に伝えてくる。



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