44:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/05(火) 23:27:30.82 ID:s07CgCum0
転属早々に提督は自室に吹雪を呼び出した。
指令室ではなく、彼の自室だ。
用意されていたのは鋏と櫛。
ボサボサに痛んだ髪を彼は丁寧に整えた。
それから、熱いお茶を振る舞ってくれた。緑茶だった。
急須から湯呑にゆっくりとお茶を注ぐ姿を見て、またしても吹雪は綺麗だなと感じた。
艦娘は美女、美少女ぞろいだ。
彼がいくら端正な顔立ちをしているといっても、艦娘達には及ばない。
身体も鍛えられており、間違っても女性と見間違えることなどない。
それでも、なお吹雪の目には提督の所作がとても美しいものに見えた。
自分を母親と思いなさいと彼は言った。
母親とはどういうものなのかと尋ねると、彼は一言「貴女を守る者よ」とだけ言った。
柔らかな光を放つ黒い瞳は、理解より先に吹雪を納得させた。
吹雪はどうにかして恩を返そうと思った。
どうすれば良いのか、悩んだ末に彼の秘書艦である朝潮に尋ねると、彼女は何をわかりきったことをとでも言いたげな顔をした。
『強く、正しく、そして幸福に私達艦娘があることをあの方は何よりも喜んでくださいます』
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