3:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/11(月) 00:58:40.72 ID:AHiYG1PX0
☆
「絶対、絶対勘違いされましたけど……いいんですか……私はよくないです……」
「何がだ?」
何でもないです。ええ、何でもないですし。
でも、あんなのを見られてしまって、彼女が私をもっとからかってくることは確実です。
迎えに来てくれるなら連絡ぐらいして欲しかった……うぅ、迎えにきてもらって文句を言うなんて、きっと私は悪い子です。
彼はぶつぶつと唸る私を怪訝そうに見ます。
新品のようにパリッとした黒いスーツとキッチリ結ばれたネクタイ、でも、左手にあるのはウサギのアップリケの入ったピンクのトートバッグ。
仕事上、身だしなみには気をつけないといけないと口癖のように言う彼の服装は、鞄以外大学にいる就活生達と変わりばえなどなく、この場に馴染んでいました。
「今日は忙しいんですか……?」
「いや、事務仕事ばっかりだ、ただちょっと量があるから……森久保には迷惑をかけるな」
歩幅の広い彼の後ろを早足でついていきながら、こっそりと腕時計を盗み見る。
今は時計の短針も長針も仲良く右に並んでいました。
いくら一緒に仕事をしていても、灯点し頃になれば彼はいつも私を家に帰そうとします。
今日はきっと、三時間もお手伝い出来ません。
今はもう何でもないバイトのくせに、昔はお世話になっていた事務所でいつも一緒にいたからか、仄暗い部屋に彼だけを残して帰るのはどうしても気が引けちゃいます。
もっと私に出来ることがあれば、言って欲しいとか思ったり……いえ、出来ることなんて限られてますけど……。
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