過去ログ - 橘ありす「といいますか、ラインやってません」
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:44:36.90 ID:/7x1SshP0
橘ありすちゃんがラインを始めるまでのお話です
SSWiki :
ss.vip2ch.com
2
:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]
2016/01/17(日) 23:45:06.54 ID:sW8e5iWDO
期待
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:45:40.16 ID:/7x1SshP0
「といいますか、ありすさんはLINEというものをやっているのでしょうか?」
収録前のいつも喫茶店。最近の流行に逆行するような安くて美味しくない、一日に一度まとめて入れた珈琲を出してくれるこのお店にで私たちは今日も入り時間が近くなるまでの時間つぶしをしていました。
ランチタイムは比較的繁盛するものの、その時間を過ぎてしまえば閑古鳥が鳴いているこのお店は今日も相変わらずのようで、私達以外にほとんどお客さんは来ていないようです。
唯一いつもの風景と違うのは、普段は次の番組の台本や難しそうなハードカバーを捲っている文香さんの机の上に、スマートフォンが置かれていることでしょうか。
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:46:18.39 ID:/7x1SshP0
「今日は本は読まないんですか?」
根っからの文学少女である文香さんがあまりイメージには無いスマートフォンを前に固まっている今の光景に、どうしても居心地の悪さを覚えた私は率直に訪ねてみることにしました。
「...ええ。...普段、ありすさんには私の趣味に合わせて頂いているところが多くあるので...私もありすさんが好まれているガジェットというものに挑戦してみようとおもったのですが...どうも難しくて...」
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:46:49.33 ID:/7x1SshP0
「そんなことですか、私に任せてください」
「よろしくお願いします。...画面が勝手にくるくる動いてしまうのと、アプリを終わらせる方法が知りたいのですが」
なんだ、そんなことですか。と、私は慣れた手つきで画面を下端に指を添えてそのまま上に撫で上げました。
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:47:28.43 ID:/7x1SshP0
「これをコントロールセンターといいます」などと私が説明するたびに文香さんは「はあ」とか「へぇ」などといつもの落ち着いた優しい声で相槌をいれてくれたおかげで、私も自分のペースを乱すことなくアプリを終わらせる方法まで上手に説明ができました。
それほど難しい操作でもなかったこともあり、どうやら文香さんにもうまく説明が伝わったようで「...ひとつ悩みが減りました。...ありがとうございました」と、やわらかくはにかんでくれました。
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:49:05.97 ID:/7x1SshP0
文香さんの笑顔は、ときたま同性の私すらどきどきさせられます。
私はずっと、「素敵な女性」というのは美城常務のようなパリッとしたビジネスマンのような方をイメージしてきまし、将来はそういった大人になりたいと考えてきました。
ですから、私も事務所に入ったころはそういった大人の方の下でたくさんのことを学びたいと思っていました。
ですが、、今私がご一緒させていただいているのは、言葉は悪いかもしれませんが、正反対の性格の文香さんです。
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:
◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:49:46.95 ID:/7x1SshP0
そして、今の私はこの環境を整えてくださったプロデューサーさんと、文香さん自身にとても感謝しています。
嘗てならこの環境にまた頭を悩ませていたことだろうと思うと、きっと私は、変わりつつあるでしょう。
そして、きっとそれはとても良いことです。
「せっかくなので、私がおすすめするアプリをご紹介します」
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:50:12.16 ID:/7x1SshP0
「ところで、ありすさんはラインというものをやっているのでしょうか?事務所の皆さんが話していらっしゃって、少し興味があるのですが」
そうです、文香さんとのお話はとても楽しいのです。
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:50:46.06 ID:/7x1SshP0
「っていうか、橘ってまだラインやってねーの?」
突然、まるで予想をしていなかった話題を振られたことで私が蹴飛ばした石ころは右に大きく反れて、溝の中に落ちて行きました。
「相変わらず橘は下手くそだなー。ちゃんとレッスンやってるのか?」
以下略
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:
◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:51:26.34 ID:/7x1SshP0
「あ、貴方が急に変な話をするからでしょう!今どんなニュースが
世の中をにぎわせているか分かっているですか?」
私の頭の中に浮かんだのは、既婚男性とのLINEという韓国産のコミュニケーションアプリを通した仲睦まじいやりとりを流出させ、記者会見で頭を下げていた女性ハーフタレントではなく、眉尻の下がった文香さんの顔でした。
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:51:55.93 ID:/7x1SshP0
「あのさー、橘はずっと個人情報の流出がどうこう言ってるけど、あんなもん事故だよ事故。ハーフタレントの件はラインがどうこうの話じゃないって」
「そういう話じゃないんです。私がああいったSNSを使いたくないのは、そもそも必要性がないからです。メールや電話じゃどうしていけないんですか?」
私は晴さんから転がってきた新しい石を靴の内側でとめ、蹴り返しながらそう答えました。
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:52:31.85 ID:/7x1SshP0
「いや、だって便利だぜ?通話無料だし、皆でグループ作って一緒に話しできるし」
「3キャリアかけホーダイの時代に通話が無料なのはもう何のメリットでもないですし、別にメールでも皆で会話はできます」
そもそも、みんなスタンプを送りあっているだけで実のある会話なんてほとんどしていないことを私は知っています。
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:53:07.94 ID:/7x1SshP0
そう言って晴さんはポケットからスマートフォンを取り出して、プロデューサーと話し始めました。
手持無沙汰になった私は、自分のアイフォンで時間を確認するふりをして、着信の有無を調べます。
予想通り、私の着信履歴は前に見た時と変わらずに母親からの着信がトップに残ったままでした。
プロデューサーさんはいつも、手慣れているからという理由で電話ではなくラインの通話機能を使うのです。
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:53:53.66 ID:/7x1SshP0
そうやって、ラインを使っている他の皆とプロデューサーさんの距離は、ラインを使っていない私を一人取り残したままどんどん縮まっているように思えます。
前に、「どれだけ低くても情報流出のリスクがあるアプリを仕事に使うのは社会人としてどうかと思う」という話はしたのですが、残念ながら聞き入れて貰えませんでした。
「ここは、私が大きく一歩を踏み出すべき場所なんでしょうね」
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:54:23.32 ID:/7x1SshP0
きっと、私は誰よりも上手にラインを使いこなすことが出来ないでしょう。
メールには無い既読システムにイライラするでしょうし、返信を待たずになんども追伸を送ってしまうかもしれません。
既読の表示が分からなくなるように、真っ白な画面を背景にして周りに引かれてしまうかもしれません。
晴さんや梨沙さんに比べて、ちっとも震えない自分の携帯電話に自己嫌悪に陥る日はきっと一度や二度では済まないでしょう。
それでも私は、一歩を踏み出すべきなのでしょう。
以下略
17
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:54:52.34 ID:/7x1SshP0
「わりーわりー、ライン終わったぞ!」
「晴さん、私。ラインを始めようと思います」
「、、、、、、えっ?」
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:55:20.18 ID:/7x1SshP0
「おう、おはよう!橘ありす」
事務所のドアを開けると、いつもどおりの飄々とした笑い顔でプロデューサーさんが私のフルネームを呼び上げました。
「もういい加減にしてください......ありすって呼んでくれて構わないので、フルネームで呼ぶのは勘弁してください、、、」
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:55:48.94 ID:/7x1SshP0
「あはは、そうだったな。ごめんな、ありす」
そう言ってプロデューサーさんは私の頭をとんとんと撫でました。
ほっぺが緩まないように気を付けながら、プロデューサーさんをきっと上目で睨みつけるまでの一連の流れが、私は決して嫌いではありません。
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:56:21.59 ID:/7x1SshP0
「あ、あの。プロデューサーさん?」
「お、どうしたありす。この前のテストの結果が返ってきたか?」
「いえ、そうではなくて」
以下略
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◆D8xDA/1ZL6
2016/01/17(日) 23:56:48.64 ID:/7x1SshP0
ちょうとプロデューサーさんとちひろさんしか居ない今がチャンスと、さっそくながら打ち上げてはみたのですが、もしかしたら食いつくような形になったかもしれません。
プロデューサーさんにびっくりされていないだろか、と顔を覗き見ると何故かとてもやさしい顔をしていました。
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