過去ログ - 元提督「ホームレスになったった」
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38: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 16:15:41.20 ID:Xt+z0oE0O
「幸いなことに、この二つの施設への直接的な攻撃は全て防ぐことができました。でも次は防ぎきれないかもしれない、というのが現状です。海軍は深海棲艦に占領されている海域の解放に注力しているので今さら近海に戦力は割けない。低練度の軽巡と駆逐から成る水雷戦隊を臨時に編成して警戒を強化していますけど、こんなんじゃどうにもならない」

加賀は地図を俺の方に寄せて背もたれに寄りかかった。地図はくれるらしい。

「私は補給も受けられないからあの範囲を闇雲に探し回るようなことはできない。だからあなたに羅針盤を回してほしいの」
以下略



39: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 16:16:58.33 ID:Xt+z0oE0O
羅針盤。出撃した艦隊の針路は例外なくこれによって決められる。

深海棲艦の持つ技術を利用したと言われているあの装置の中身はブラックボックスで、わかっているのは必ず艦隊を敵の潜む場所に導くということと、羅針盤を起動し操作できるのは適性のある人間だけだということだ。

今日の日本海軍において提督とは羅針盤を回すことのできる人間と言ってもいい。
以下略



40: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 16:18:19.14 ID:Xt+z0oE0O
まるで俺はそれしか能のないやつだと言われたような気がしたが、現状その通りだろう。俺がどんな失敗をしたかを知っていればそれは正しい認識だ。

「私はもう寝ます。電気消しといて」

そういうと加賀は座ったままパチリと目を閉じた。一つしかないベッドは譲ってくれるらしい。
以下略



41:名無しNIPPER[sage]
2016/01/23(土) 20:40:24.98 ID:U5ZZ2igDO
加賀は素直になれないのか恨んでいるのかコミュ障なのか分からんな
その全部なのかもしれんけど


42:名無しNIPPER[sage]
2016/01/23(土) 20:42:12.57 ID:Ujz0Zh29o
目的を果たす以外はどうでもいいって感じじゃね


43: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 23:29:18.14 ID:qQOfK41aO
過去が断片的に再生される。夢を見ているのだとわかる。

憂鬱な朝にホルスターを差し出してくれた時の優しい笑顔。

基地の単調な献立に毎日喜んでいた。
以下略



44: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 23:30:13.55 ID:qQOfK41aO
まぶたが開いてしまった。悪夢のせいで目が覚めてしまった。なにも変わらない。昨日だって同じ夢を見ていたのだ。

なにか落ち着かない。久しぶりにいいベッドで寝たせいか? 違う。酒がないからだ。ポケットに手を入れると指先が小銭にぶつかる。

買いに行ってこようか。
以下略



45: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 23:31:02.06 ID:qQOfK41aO
話しているようではなくて、我慢しても尚漏れてしまう……すすり泣いている声だ。

ベッドライトを点けて起き上がる。
加賀はぐったりうなだれて、膝に涙を落としている。

以下略



46: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 23:32:12.78 ID:qQOfK41aO
真っ赤になった目を手の甲で拭うとぷいっと顔をそらした。

「構うな。悪夢を見る夜だってある」

「あなたも見るの?」
以下略



47: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 23:33:00.00 ID:qQOfK41aO
彼女のことを思い出して少しだけすっきりした。
落ち着き払い、昼間は決して慌てたりしないような彼女が夢を怖がるというのはなんとなくおかしかった。

日付けが変わる頃に決まって彼女は嫌な夢を見た、と執務室にやって来た。
そこから一時間が、たぶん赤城が兵器でも兵士でもなくただの人間になる時間だった。
以下略



48: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/01/23(土) 23:33:43.34 ID:qQOfK41aO
話さずにはいられなかった。誰かに聞いてもらえればここまで落ちずに済んだかもしれない。

「俺のせいで死んだ。最後まで俺からはなにもできなかった。赤城はなにもかも俺のためにやってくれたのに……」

加賀がこちらに視線を向けた。
以下略



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