過去ログ - 元提督「ホームレスになったった」
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84: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:09:28.76 ID:rab1uZB0O
五十鈴が叫んだ。
「雷撃、来ます! 散会して!」
あれほどの艦載機から落とされる雷撃は艦隊にどれほどのダメージになるのか。
85: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:10:03.55 ID:rab1uZB0O
魚雷はよく狙って放たれたらしく、雷跡は俺たちの所には全く来ない。
爆音。魚雷は命中こそしなかったが、衝撃の余波は凄まじかった。
ボートは傾き、俺も水面に叩きつけられる。最後に見えたのは、矢を放ち、走り出す加賀だった。
86: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:10:38.60 ID:rab1uZB0O
どれほど時間が経ったのかわからない。たぶん大した時間ではないだろう。
それよりも感じたのは息苦しさだった。空気を吸おうと大きく口を開けると大量の水が気管に流れ込み、余計に苦しくなる。
水の中だ。そう思った時にはもう首から上が海面に出ていた。
87: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:11:09.75 ID:rab1uZB0O
もう敵艦載機の姿は見えなかった。
つい今しがたまで対空射撃していたのが嘘のような静けさだ。
第二艦隊は?
通常であれば砲雷撃戦に移行する。
88: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:11:48.06 ID:rab1uZB0O
ボートに登るとこちらに戻ってくる二人の姿が見えた。
口の中がさっと乾く。
加賀は目立って損傷はないが、瑞鶴の肩に片腕を載せてだらりと垂らしている。
瑞鶴の方もひどい。飛行甲板は割れ、艤装も所々で破れている。彼女も大破か。
89: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:12:28.18 ID:rab1uZB0O
もう潮時だ。加賀もダメージを受けた以上は入渠と補給の必要がある。
それに俺自身も諦めがついた。一度やれば失敗しても少しはすっきりする。無茶なことだったんだ。
瑞鶴は船尾からひらりとボートに登ってきて、舵の隣のシートに加賀を横たえた。
90: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:13:12.95 ID:rab1uZB0O
「加賀さんを返して……」
「あぁ、大丈夫。誘拐とかする気じゃあ……」
「違う! 元の加賀さんを返して! 私が大好きな加賀さんを返して!」
91: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:13:52.96 ID:rab1uZB0O
「加賀さんはいっつも言ってたの。五航戦なんかと一緒にしないでって。でも本当に私と翔鶴姉のことを嫌ってたわけじゃないの。私の出来がどれほど悪くても、絶対に見捨てないで指導してくれた。結局いつも私のことを気遣ってくれてたの」
「意外だな。あいつ、嫌味しか言わないと思ってたよ」
「ちょっと不器用な人だから」
92: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:14:30.11 ID:rab1uZB0O
「私たちの提督さんは、きっとそんなことしたがらない。優しい人だから。でもあの人の意向が海軍の意向じゃないから……それにもし私たちが沈めても、加賀さんは納得しないはずよ」
「そんなこと言っても敵うわけない。さっきの見ただろ。加賀だけじゃ無理だ」
「加賀さんはきっと勝つ。一航戦は絶対に負けないの!」
93: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2016/02/02(火) 02:15:23.12 ID:rab1uZB0O
「黙れ! 知ったような口をきくな!」
すぐに冷静になった。バカなことをした。女の子相手にキレるとは情けない。
ため息が漏れた。
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