過去ログ - 《ロールシャッハ・カウント》
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1:名無しNIPPER
2016/01/25(月) 23:23:25.61 ID:B1vz8BkL0
 僕の友人の話をしよう。
 彼は『友人』という安っぽい言葉を嫌っていたけど、他の言葉を探していては話が進まない。
 今の僕にそんな時間はない。
 彼には悪いが、ここでは『友人』として扱わせてもらう。
 彼は、めちゃくちゃな持論をいくつも持っていた。
 例えば、『疑わしきは罰するべきだ』とか『人類全員、犯罪予備軍だ』とか『スカートの無用性』とか。
 それらは、大体詭弁だったり、冗談混じりだったりしたが、ほとんど、本気で喋っていた。
 先程言った通り、今の僕には時間がない。ので、その勇ましい詭弁たちの、一つだけ。読者の皆様にお伝えしよう。

※完全オリジナルです。

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2:名無しNIPPER
2016/01/25(月) 23:25:05.45 ID:B1vz8BkL0
「自殺の手段の一つとして、線路に飛び込み。ってのがあるじゃん?」
 彼のその話を聞いたのはいつだったか、何月何日かは忘れたけれど、それが昼休みのことだったということは覚えている。
 昼ご飯を前に、食欲が著しく失われたことを覚えている。
「………それで?」
 僕はトマトを、弁当箱の隅に追いやりながら彼に続きを促した。
以下略



3:名無しNIPPER
2016/01/25(月) 23:26:20.03 ID:B1vz8BkL0
「だってさぁ、まず痛いだろ?他に楽な死に方はいっぱいあるだろう。それに他人に、それも大勢に迷惑がかかる。誰も幸せにならない」
 僕はいよいよ箸を置いた。
「……自殺なんかする奴は誰の幸せも考えないだろう。もちろん、自分の幸せも」
「そうだよな。そこだよ。俺が言いたいのはそこだ。幸せを考えない。もしくは、考えられない。そういう奴はもう生きてないんだ。死んでるんだ。『人間は考える葦』とはよく言ったぜ。考えない奴はもう人間じゃない」
 正直彼の話に、僕が同意することは少ない。大体間違っているからだ。
以下略



4:名無しNIPPER
2016/01/25(月) 23:27:19.10 ID:B1vz8BkL0
「あと能天気とかマイナスイメージの言葉を俺に使うな。不死身だ。最強だ」
 彼の持論は大抵、自己肯定で終わる。
 彼はそんな自分のことをまわりくどいナルシストと呼んだ。
 自覚のあるナルシスト。
 それは矛盾しているようでもあるが、そもそも、彼の持論は、持論同士で矛盾していることが多い。
以下略



5:名無しNIPPER
2016/01/25(月) 23:28:27.83 ID:B1vz8BkL0
 ホームはそれなりに人で埋まっていたが、その珍妙な絵画を見ている人間は、その時、僕だけだった。
 確か、この絵画についても、彼と話した記憶がある。
 今日、課題の期限がどうたらということで彼は学校に居残っているが、いつもは一緒に帰る仲良しなのだ。
 毎日この絵画が飾られたホームで詭弁を聞いたりしている。
 彼はこの絵画を気に入っていた。
以下略



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