110:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 02:05:52.41 ID:NYPOpsNEo
学校の傍の並木道では、春を待ちわびるように桜のつぼみが顔を覗かせている。
春が来れば桜が咲いて、やがてすぐに桜は散って、全てはむかしばなしになっていく。
そんな始まりと終わりの繰り返しの中で、誰かが放った過去の光に、他の誰かは恋焦がれるかもしれない。
それは誰かの心を照らすかもしれないし、他の誰かは見事あこがれをその手に掴むのかもしれない。
だけどそれは全て、終わってしまった物語だ。
私には、おとぎ話の続きを見ることはできなかったけれど、
代わりに私は私の物語を歩むことが出来る。
最初から今まで続いてる何かが、終わりゆくむかしばなしの中で、悲しいくらいに私を私足らしめていて、
私の足は、私をただ私の物語の続きへと運んでいく。
そして、そんな私を、私のままで愛してくれる人がいた――
ちなつ「ねぇ、あかりちゃん」
私は不意にあかりちゃんに声を掛ける。
あかり「なぁに?」
ちなつ「なんでもない」
茶化すようにそう言って、再び歩き出す。
――だから私は、桜が咲いて、桜が散って、いつか今の気持ちがむかしばなしになった後も、
ずっとずっと、私の足が辿り着く最後の地まで、あかりちゃんの隣で笑っていたいと願うのだ。
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