過去ログ - ジャムおじさんの息子
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12:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 05:18:03.14 ID:/p0Ll9udO


「あの……それなら、ロールパンナちゃんはどうなんでしょう」


ジャムおじさんはピタリと動きを止めた。
僕はその一瞬を見逃さなかった。


「ロールパンナも、そんなことはしないと思うよ。
あの子は、バイキン草の力でアンパンマンを敵だと思い込んでしまってるだけなんだ。
その力が無くなれば、きっとアンパンマンとも仲間になれるはずだ」


ジャムおじさんはにこにこと笑って僕を見る。
だから、僕は言葉を押し込んで笑った。


「ありがとうございます。僕、安心しました」

「そうかい。それは良かった」

「じゃあ、僕はバタコさん達と一緒に掃除してきますね」

「ああ、頼んだよ」


ジャムおじさんが整備を再開する音を聞きながら、僕は扉を閉める。
しばらく扉の前で立ち止まっていた僕に、バタコさんの明るい声が飛んできた。


「アンパンマーン!そこにいるー?」

「あ、はーい!」

「ちょっと雑巾とってもらってもいいかしら?」

「はい!」


そばに干してあった雑巾を持って、僕はバタコさんとチーズの方へ駆け寄った。
僕たちはバタバタと忙しく動き回り、部屋の中を綺麗に片付けていく。
そうしている内に夕食の時間になり、みんながご飯を食べるのを見守って、僕はみんなに声をかけた。


「おやすみさい」

「おやすみさい、アンパンマン」

「おやすみ、今日はゆっくり寝るんだよ」


チーズも元気よく僕に笑いかけ、僕も笑いながら二階へあがった。
なのに、僕は今日のあのときと同じだ。
階段を一段上るごとに、笑顔は少しずつ消えていって、僕は笑顔と共に自分も消えてしまうような気がした。
そうして、なにも分からなくなり一人ぼっちになって、別の世界を漂っているような、そんな気分だった。


「ロールパンナちゃんは、僕を消してしまいたいのかな」


口に出してしまった言葉は、鋭い爪になって僕を切り裂いた。
僕は急に背筋が冷たくなって、胸がドキドキしすぎて壊れてしまうんじゃないかと思った。
窓の外の闇すら、今の僕は怖くて仕方なくって、どうしたらいいのかも分からなくって、急いで布団に潜り込んだ。
明日になれば、きっと元に戻ってる。
僕はぎゅっと目をつぶった。
暗い部屋の中で、時計の秒針の音だけが響いていた。


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