17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/02/10(水) 05:37:29.12 ID:/p0Ll9udO
「でも、どうしてパン工場に住まなくなったの?」
「それはさ、俺はすごいやつだから、もう一人でも大丈夫だなって思って」
「そうなんだ。カレーパンマンはすごいなぁ」
「そうでもないぜ。いざ一人で暮らし始めたら、なんにもうまくいかなくってさ。
ジャムおじさんとバタコさんが当たり前にやってたことは、実はすごいことだったんだなぁって、思ったよ」
カレーパンマンは恥ずかしそうにしながら頭をかいた。
「それで、俺……一回帰ってこようとしたことがあるんだ」
「そうなの?」
「ああ……。なんだか夜がすごく心細くなって、ジャムおじさんの作ったカレーが食べたくなって。
俺はすごい速さでパン工場まで飛んできたんだ。
ジャムおじさんの顔をみたら、俺、なんだか泣きそうになっちまった」
おかしいだろ、と笑うカレーパンマンに僕は真剣に首を横に振る。
「それは辛いよね……。なのに、どうして帰らなかったの?」
「えっとな……まぁ、悪く思わねぇで欲しいんだけど」
カレーパンマンはまた気まずそうに頭をかく。
「ジャムおじさんに抱きついて泣こうとしたらさ、隣にお前がいたんだ」
「えっ?」
「いや、お前が悪い訳じゃねぇぜ。
でも……なんつーかここはもう俺の居場所じゃねぇなって、こう。
胸の奥に深く響いていくように、そう思ったんだ」
僕は、なにも言えずにカレーパンマンの顔を見ていた。
「恨んでる訳じゃねぇし、俺はアンパンマンのこと大好きだぜ。
けど、たまーに嫉妬しちまうのは許して欲しいんだ」
「しっと、って?」
「お前が俺に感じた気持ちだよ。俺達が話してたら寂しさを感じたんだろ?」
「それは……でも……」
僕はカレーパンマンから目をそらして、呟くように言った。
「その気持ちは……悪いことじゃないのかな」
「なーに言ってんだよ。じゃあ、俺は悪いことをしてるってのか?」
「う、ううん。そうじゃなくて」
「大丈夫、分かってるよ。俺もアンパンマンも悪いことなんかしてねぇから。
ただ、ちょっぴり大人になったのかもしれねぇな」
カレーパンマンはいたずらっぽく笑って、人差し指を口に当てた。
「でも、このことはみんなには内緒だぜ。
俺たちだけの秘密だ。守れるか?」
「うん、約束するよ」
「それじゃあ、この話は終わりだ。
他に話したいことはねぇか?」
僕はすっかり安心していたので、ちびぞう君から聞いた話を、ためらわずにカレーパンマンに話してしまった。
カレーパンマンは、思った通り笑い飛ばしてくれた。
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