過去ログ - ジャムおじさんの息子
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21:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 05:44:42.60 ID:/p0Ll9udO


「あの……これは僕のなんでしょうか?」

「うん、まぁ、そういうことね」

「でも、僕……」

「あのね、アンパンマン。
私は風邪を引くと、いっつも美味しいごはんを食べて、ゆっくり眠ることにしてるの。
そうすると、次の日は元気100倍なんだから」

「はい……」


僕はなにか悪いことをしているような気分で、お箸と真っ白なご飯に手を伸ばす。
お米の粒がふっくらとしていて、かすかに甘い香りが湯気になって立ち上った。


「じゃあ……いただきます」


慣れない手つきで箸を握る僕は、そっとお米の塊を箸の先でつかみ、口へと運ぶ。
なぜか僕は目を開けているのが怖くて、ぎゅっと目をつぶった。

しかし、僕は驚きで目を開いてしまった。


「美味しいですね」

「ええ、美味しいでしょう?」


目を開けても、バタコさんは優しく笑ってくれていたので、僕は次々とご飯を口に運んだ。
今日の献立はわかめの味噌汁とさばの塩焼きで、僕は顔が濡れてしまわないか不安だったけど、それでも箸を止めることは出来なかった。
そして、気がつくと僕はご飯を完食していた。
やっぱり、顔が濡れてしまったのだろうか。
体に力が入らなかった。


「アンパンマン……」


バタコさんの心配そうな声が響く。
僕は精一杯声を絞り出して、バタコさんに言った。


「大丈夫です。僕は大丈夫」


なんでこんなに目が熱いのか、僕には分からなかった。
今にも涙が溢れてしまいそうで、バタコさんに抱きついて泣きたくなった。
けれど、僕はそうしなかったから、バタコさんも僕の背中を撫でるだけだった。
窓から差し込む夕日がこんなにも温かいのに、僕は布団の中から出ることが出来なかった。


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