22:名無しNIPPER[sage saga]
2016/02/10(水) 05:47:12.17 ID:/p0Ll9udO
次の日、お日様は相変わらず光り輝き、野原の草や木も一本残らず照らしていく。
その優しさは僕の部屋にも届いて、壁にかけられた僕のマントや外行きの服を照らした。
この服はジャムおじさんが考えたもので、バタコさんが作ってくれた物だった。
そしてその服を着た僕を、チーズはカッコいいと言ってくれて、みんなは僕のマントが見えるとほっとすると言ってくれた。
僕は今日もその服に手を伸ばし、袖に腕を通す。
ベルトをきゅっと腰に巻いて、僕は自分に気合いを入れた。
「よーし、今日もがんばるぞ」
熱はみんなのおかげですっかり引いて、僕はしっかりと立つことが出来た。
しかし、足の裏の方がむずむずするような、もやもやしたものを、僕は心の中に感じた。
正体が分からないものに背中に乗られているように、ぼんやりと怖かった。
「やっぱりまだ、具合が悪いのかな」
少し不安を感じながら、僕はパン工場の階段を降りる。
一段、一段、踏み外さないように慎重に工房へ向かった。
しかし。
「アンパンマン」
僕を呼ぶ声が聞こえると、僕はよろけて階段から落っこちそうになった。
優しげな声は焦りを帯びて、僕に近づいてくる。
「大丈夫かい?一体どうしたんだい」
「い、いえ、大丈夫です。まだちょっと寝ぼけてて」
僕は慌ててジャムおじさんから逃げるように、階段を降りた。
「まだ調子が悪いなら休んでいた方が……」
「いえ、もう大丈夫です。僕の顔は出来上がってますか?」
「ああ、そろそろ焼き上がるころだよ」
ジャムおじさんはかまどの方に歩き出し、僕は緊張しながら後を追った。
今日はバタコさんも起きていたようで、台所の方から歩いてくるのが見える。
バタコさんは、二人分のコーヒーを手に、少し不安そうな顔をしていた。
「今、大きな声が聞こえたけど……なにかあったの?」
「いえ、僕がちょっと階段を踏み外しただけです。
寝ぼけていたみたいで」
「そう……まだ具合が良くないなら、今日もお休みする?」
「いえ、僕はもう大丈夫です」
僕は誤魔化すように笑って、ジャムおじさんが開けたかまどの中をのぞきこんだ。
自分の顔について言うのもおかしいけど、かまどの中の僕の顔は、ほかほかに焼き上がっていて美味しそうだった。
パン工場に、あんこの甘い香りが立ち込める。
「じゃあ、顔を取り替えようか」
「はい」
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