24:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 05:51:28.77 ID:/p0Ll9udO
「あ、そういえば、もうすぐ小麦粉が無くなってしまうんだっけ」
ふっとパン工場の隅に積まれた袋の数を思い出して、僕は全てを振り払うように、ヤギおじいさんの所へ向かった。
大きな風車のそばで、太陽に向かって伸びをしているヤギおじいさんを、僕はすぐに見つけることが出来た。
「おはようございます」
「おはよう、アンパンマン。そろそろ小麦粉が無くなる頃だったかな」
「はい。小麦粉を分けて下さい」
「分かったよ。少し待っていなさい」
ヤギおじいさんはゆったりとした足取りで、風車の中へ歩いていった。
しばらくして、小麦粉の袋を台車に乗せて、ヤギおじいさんは戻ってきた。
「今回は良い小麦粉が出来たからね。早くアンパンマンに渡したかったんだ」
「うわぁ、ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらだよ。私もアンパンマンには何度助けられたか分からないからね。
でも、そのアンパンマンの顔も私の小麦粉で作られていると思うと、ちょっと誇らしい気分なんだ」
「ふふ、ありがとうございます」
僕はお礼を言って、小麦粉の袋を抱えて地面を蹴った。
ふわりと舞い上がる僕を、ヤギおじいさんは目を細めて見つめている。
優しく下がった目尻も、僕のことを信頼してくれているからなんだなぁと、深く僕の心へ響いた。
それに小麦粉のおかげで、僕はジャムおじさんと話す理由も見つかったから、うきうきしながら空を飛んでいた。
今回はジャムおじさんに頼まれた訳じゃなくて、僕が自分で気がついたことだから、それもちょっぴり誇らしかった。
「ただいま」
ひんやりした朝の空気の中、パン工場にたどり着いた僕は、少し胸を張って玄関の扉を開いた。
しかし、中にいたジャムおじさんは、酷く動揺した顔をしていた。
「ああ……おかえりアンパンマン」
一瞬、僕の顔を見て不安な顔をしたのかと思ったが、状況は少し違っているらしかった。
工房にはバタコさんとチーズはおらず、ジャムおじさんがかまどを背にして座っている。
そして、その向かいには、男の人の背中が見えた。
「あの、ジャムおじさんになにか用なんですか?」
語尾を荒げないように、僕は慎重にその人へ話しかける。
ジャムおじさんがこんなに困った顔をしているのは、この人が原因なんだろう。
僕は少しだけ怒っていた。
しかし、そんな思いは、その人が振り向くと全て消え去った。
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