30:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 06:02:08.89 ID:/p0Ll9udO
僕はいつも通りに帰り道を飛んで、パン工場の前へ降り立った。
外はすでに闇に包まれていて、星の光がかすかに瞬いている。
月の光が今日は明るく、パン工場の扉を照らした。
急に僕は、扉についた古い傷や古い汚れに気がついたが、あまり気にせずに扉を開けた。
すると、中にいたみんなが一斉に僕を見た。
「アンパンマン!」
「ただいま」
僕がにっこりと笑うと、イスに腰掛けていたしょくぱんまんが、僕の方へ駆け寄った。
「心配したんですよ!こんな時間までなにをしていたんですか!」
「なにって……パトロールだけど……」
しょくぱんまんは大きくため息をついて、またイスに座り込んだ。
今度はバタコさんとチーズが、僕の方へ心配そうに近寄ってくる。
「アンパンマン……体、なんともないの?」
「どうしてですか?」
「だって、ばいきんまんに連れて行かれたんでしょう?」
「大丈夫ですよ。ばいきんまんは僕を助けてくれたんです」
「助けてくれたって……」
バタコさんはそれ以上はなにも言わず、黙り込んで僕のそばへ立った。
チーズも不安そうに尻尾を揺らしている。
僕は二人が安心するように、笑ってみせた。
「なんだか前よりも調子がいいんです。だから、僕は大丈夫」
パン工場の中が今までにないくらいしんとして、僕はどうしたらいいか分からないので、もう部屋に戻ることにした。
「もう、僕は寝ますね。おやすみなさい」
「待って、アンパンマン……」
「どうしたんですか?」
「その……怒ってるの?」
「えっ?」
僕は訳が分からずに、首を傾げた。
「僕は怒ってないですよ?」
「そうよね……なんでもないわ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
パン工場の隅の階段を上って、僕は自分の部屋を目指す。
廊下を歩いている時、ふとジャムおじさんが暗い顔をしていたことに気がついたけど、あまり気にならなかった。
僕は部屋の扉を開けて、布団に潜り込み、静かに目をつぶった。
すぐに深い眠気に襲われて、僕は簡単に意識を手放した。
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