過去ログ - ジャムおじさんの息子
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33:名無しNIPPER[sage saga]
2016/02/10(水) 06:06:36.27 ID:/p0Ll9udO


「……はっ!」


僕はベッドの上で、勢いよく起き上がった。
見覚えのない場所で寝ていたらしく、僕は背筋がすっと冷たくなる。
僕はまたなにかをしてしまって、誰かの家で寝ているんだろうか。
しかし、いくら思い出そうとしても、なにも思い出すことは出来なかった。


「あら、目が覚めたのね」


気がつくとそばにでかこ母さんがいて、僕は怯えながら彼女を見上げた。
そんな僕の横に座り、でかこ母さんは優しい顔で笑う。


「森の中で倒れていたそうね。ピョン吉君のお父さんが、ここまで連れてきてくれたのよ」

「ピョン吉君のお父さんって確か……」

「ええ。森で足をくじいて倒れていたって言ってたわ」


僕はなにも言えずに、布団を握りしめた。


「でも、倒れているアンパンマンの姿を見たら、自分の足の痛みなんか忘れてしまったんですって。
もう、アンパンマンのことを助けることしか考えられなかったって、ちょっと胸を張ってたわよ」

「そうですか……」


僕は目を伏せて、でかこ母さんと目を合わせないようにした。
でかこ母さんは僕が聞きたいことを分かっているらしく、小さい子に話すように優しい声で告げた。


「どうしてアンパンマンがウチにいるかだけど、アンパンマンはもともとピョン吉君のおうちへ運ばれたのよ。
けど、ピョン吉君はアンパンマンのことが怖かったんだって。
どうしてか、分かるわよね」


胸がどきりと鳴って、呼吸が浅くなるのを感じた。
背中は脂汗をかいていて、体温はさっきよりも冷たくなる。


「ピョン吉君はどうしてもショックで、アンパンマンを見ると泣き出してしまった。
そこで困ったピョン吉君のお父さんは、私に相談したの。
私はさらにちびぞうに相談したわ。
そうしたらちびぞうも怖がって泣いたけど、私はちゃんと話してみることにした」

「なにを話したんですか……?」

「アンパンマンにも悩みはあるってこと。
そんな当然のことを、あの子達は分かっていなかったから。
私たちの教育不足ね」


でかこ母さんは気まずそうに笑って、僕の手をとった。


「アンパンマンがここにいることは、パン工場のみんなには教えてないわ。
だからしばらくゆっくりしてなさい」

「そんな!パン工場のみんなが悪いわけじゃないんです!」

「ごめんなさい、言い方が悪かったわね」


そう言うと、でかこ母さんは僕をぎゅっと抱き締めた。
僕は慌てて腕の中から逃げ出そうとした。


「あの、僕」

「大丈夫よ、誰もパン工場の人が悪者だなんて思ってないから。
ただ、距離を置くこともたまには必要なのよ」

「だけど……僕はここにいたら迷惑をかけるかもしれません」

「あら、どうして?」


僕は言葉につまって、でかこ母さんから目をそらした。
でかこ母さんは寂しそうに笑う。


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