63:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:17:40.91 ID:XmKtMl4U0
差し出された右手を見ると同時に涙で視界が歪んだ。
ボクは雪歩の手を両手で掬うようにそっと握る。
「雪歩、ごめん。本当にごめん。ボクは……」
胸が詰まってしまって上手く言葉が出てこない。
あんなに酷い事をしたのに……それでももう一度歩み寄って来てくれた雪歩。その優しさが言葉に出来ないくらい嬉しくて……。
思わず項垂れると目じりから涙が流れ落ちた。
ごめん、ごめんなさい、と嗚咽の合間に言い続けるボクの頭が柔らかく抱きしめられる。
「ごめんね……。真ちゃんも辛い思いをしてるはずなのに……私、自分の事ばっかりで……。」
「違う……ボクが全部悪いんだ……。付き合う事の意味もわからず無責任に雪歩の想いを受け入れたりして……。」
「ううん……私、真ちゃんと付き合えて本当に良かったって、今は素直にそう思えるの。少しの間だけでも真ちゃんの恋人になれて幸せだった。その結果どうしても上手くいかなかったんだから、未練なんて残るはずないよ。真ちゃんが私と同じ気持ちになろうと努力してくれた……ただそれだけで……」
頭頂部に熱い雫が落ちてくる。……雪歩、泣いてるの?
未練が無いなんて嘘だ。あんな別れ方、納得できるはずがないよ。
でも、そんな嘘を言ってまで仲直りしようとしてくれる雪歩の気持ちがただただ嬉しくて、ボクはそれに甘える事にした。
やがて涙も止まり顔を上げると、少し目を赤くした雪歩と目が合った。
「私達、ずっと友達でいようね。」
「うん。ずっと友達でいよう。」
あれから随分と時間が経ってしまった……でも、最後には微笑み合うことができた。良かった、雪歩と友達に戻れて本当に……。
――雪歩の「ずっと友達でいよう」という言葉に胸がチクリと痛んだ気がしたけど、ボクはそれを無視した。その違和感よりも雪歩と友達に戻れた事の方がずっと嬉しかったし、何より、その痛みの原因に気付いてはいけないような気がしたから……。
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