過去ログ - 曙「バレンタインなんて大っ嫌い」
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24: ◆1VwSTfn.DM
2016/02/14(日) 11:59:36.93 ID:uLHwnD8FO

「え?マジでじま?手作っちゃうの?ハンドメイド?どういう風のゼピュロスブルーム?」

 尚も私を揺らし続ける腕を取っ払い、額に手刀を振り下ろす。
 人に話をさせたいのかさせたくないのかどっちなんだっつうの。

「別になんてことはないわよ、ただの気まぐれ」

「いたた……さっきまで言い淀んでおいて気まぐれだなんて絶対嘘だぜぼのやん」

「そう思うならそれでもいいわよ、言う気はないから」

 ムカついたから一泡吹かせてやるとか、礼を返し切っていないなとか、理由はあるけれど一言漏らせば根掘り葉掘り土壌ごと掘り返されそうなので秘密は厳守する。
 しばらくの間、漣がねーねーねーねーと私の周りを飛ぶ小鳥というかネズミのようにうるさかったが、私の口は開かないと察したのか同じように押し黙った。
 その後は二人で黙々と商品を買い物カゴに入れるだけ。

「……まあ市販のを溶かして成型しただけだと市販のと変わらない気がするけどね。っていうか何それ、罰ゲームか何か?」

 ふと私のカゴの中身を見た漣が露骨に苦そうな顔をする。
 それもそのはず、ビターだのブラックだの、果てにはカカオ云十%だのと甘味とは程遠いラインナップが展開されているからだ。他には申し訳程度に普通の甘いチョコレートがあるだけ。

「ふ、アイツにはこのカカオの塊を溶かして固めて、その表面だけミルクチョコレートで偽装した激渋偽装チョコを食らわせてやるのよ。こっちのビターとかのは自分で食べる用」

「アンタ……鬼の所業だよ……せめて70%台の方にしてやって……」

「そういうアンタは何それ。チロルチョコばっかじゃん」

 渋い顔して震える漣の買い物カゴを同じように覗き込んでやるといくつかの炭酸飲料が数多の小さなチョコの海に沈んでいた。

「え、あー、二、三十個溶かして固めて巨大チロルチョコーなんつってやろうかなって思って」

「台形の型なんてないでしょうに」

「こんな時のために工廠でこっそり資材を拝借して作りまして」

「イベントごとの時だけアグレッシブになっちゃって」

 お祭り女ですから、という漣と共にレジへと向かう。
 レジを打つ女性は、私の買い物カゴを見た時は僅かに驚いた顔をして、漣の時には露骨にげんなりとしていた。



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