過去ログ - 乃々「もりくぼと弱虫とチョコレート」
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◆uCbLPg/WnY
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2016/02/14(日) 22:21:46.98 ID:xDv5Ku3c0
モバマスSS。
地の文メイン。
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2
:
◆uCbLPg/WnY
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2016/02/14(日) 22:22:43.33 ID:xDv5Ku3c0
手元には、赤色の包装紙に金色のリボンでラッピングされた甘い塊。
その甘さに胸焼けしてしまいそうになりながら、私は事務所のビルの階段を上ります。
本日は2/14。平日です。嘘です休日です。
……それも、嘘です。今日は、ばれんたいんでー、だそうです。
生憎もりくぼは、こんな日とは今まで生きてきた中で無縁だったので、忘れてしまいそうになりました。
3
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◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:23:26.17 ID:xDv5Ku3c0
バレンタインデー。
バレンタインさんという人が処刑された日です。
……どうしてそんなめでたさの欠片もない日に、みんなはそわそわしたり、幸せそうにしているのか、ですか。
どうも日本は、他の国とバレンタインデーの受け止め方が違うようで。
愛を確かめ合うために、女の人が、男の人にチョコレートを贈る日という受け止め方をしているようです。
以下略
4
:
◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:24:38.91 ID:xDv5Ku3c0
で、そんな「恋人たちの日」に何故今まで無縁だった私がチョコを片手に事務所の階段を上っているのかというと。
チョコを渡す間柄は、必ずしも恋人同士でなくてはならない、という決まりはないそうで。
女の人から男の人に、恋愛感情ではなく、感謝をこめて渡す「義理チョコ」というのも存在するという話もあり、
そして私は、一応、アイドルとしてプロデューサーさんにはお世話になっていて……
5
:
◆uCbLPg/WnY
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2016/02/14(日) 22:25:39.63 ID:xDv5Ku3c0
「……手作りでは、ないですけれど」
デパートで売っていた、手元の少し高級なチョコレートと睨めっこしながら、私は階段を登り終え、廊下を歩きます。
果たしてプロデューサーさんは、喜んでくれるでしょうか。
……あの人なら、誰からどんなものをもらっても、喜びそうですけれど。
6
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◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:27:01.51 ID:xDv5Ku3c0
鉄製の扉が目に入り、私はチョコレートをダッフルコートのポケットにしまい、事務所のドアを開けようとしました。
すると、中から賑やかな声が聞こえてきます。
他の皆さんの声に交じって、プロデューサーさんの声も。
「いやー、やっぱチョコレートは手作りに限るな!」
以下略
7
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◆uCbLPg/WnY
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2016/02/14(日) 22:28:21.63 ID:xDv5Ku3c0
ピシィ、と。
もりくぼの中で何かが割れたような音がして、ドアノブを握ったまま動けなくなりました。
全然、そんなこと気にしてはいなかったのに。
言われても、私は不器用だからという言い訳まで用意していたのに。
いざ言われてみて、初めてわかる、一度私と向き合ってくれた相手の言葉。
8
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◆uCbLPg/WnY
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2016/02/14(日) 22:29:37.15 ID:xDv5Ku3c0
「……」
ドアノブを握ったまま、しばらくの間呆然としていて。
向こう側からドアを押されてはっと気がついた時にはもう遅かった。
どしんと、尻もちをついて廊下に座り込んでしまいます。
以下略
9
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◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:31:27.67 ID:xDv5Ku3c0
金色のボブヘアーを揺らして、翡翠色の瞳が私を覗き込みました。
手には食べかけのチョコレート。
口元も、少し茶色くなっています。
「どしたの〜?あ、もしかしてプロデューサーにチョコー?だったらおいで〜。あたしも味見するから♪」
以下略
10
:
◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:32:38.17 ID:xDv5Ku3c0
どうして今私は肯定しなかったのでしょうか。
何か、後ろめたい事でもあったのでしょうか。
……あったんでしょうね。プロデューサーに、手作りがいいと言われてしまったから。
ポケットの、苦々しい塊を、渡すことができなくなってしまって。
以下略
11
:
◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:33:39.59 ID:xDv5Ku3c0
私が立ちあがり、歩きだしたのを見てフレデリカさんは事務所に戻って行きました。
……これでよかったんです。これで。
チョコは後でもりくぼが家で食べましょう。いつも頑張ってる自分に、少し高級なご褒美です。
これでいいんです。あの人だって、もりくぼからもらえるだなんて、きっと、きっと、思ってませんから。
これで―――
以下略
12
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◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:34:34.28 ID:xDv5Ku3c0
コートのポケットから、今やビターになってしまったチョコレートを取り出して。
行きと同じく、階段でじっと睨めっこ。
ただ一つ違う事はと言えば。
……弱虫が、足にまとわりついて、離れてくれないこと。
この弱虫を振り解けたら、
以下略
13
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◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:35:39.28 ID:xDv5Ku3c0
「乃々!」
後ろから投げかけられた声に、弱虫は一目散に逃げ出して、階段を1匹下って行きました。。
そして私は振り返りたくもないのに、振り返ることができてしまったのです。
そこには、しわだらけの背広に身を包んだプロデューサーさんが、立っていて。
以下略
14
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◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:36:50.66 ID:xDv5Ku3c0
困ったように首の後ろを掻くプロデューサーさんを見て、もりくぼは思わず声に出してしまいました。
「……さっき、チョコは手作りに限るって、プロデューサーさん言ってました。……もりくぼのは、手作りじゃありませんから……」
拗ねたような言い方になってしまったのは、きっとそれが私の本音だからで。
以下略
15
:
◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:38:29.66 ID:xDv5Ku3c0
「手作りとか、買ったものとか、そんなの関係ないよ。俺は乃々がくれるって事が嬉しいんだ。乃々からもらうって事に、意味があるんだ」
そう言って私の手を取って言いました。
……ずるいです。プロデューサーさんは、やっぱり。
以下略
16
:
◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:39:24.62 ID:xDv5Ku3c0
「ただいま」
「おかえりプロデューサー。乃々ちゃんからチョコもらってきたの?」
「ああ」
「あたし達を置いて?」
「……ああ」
以下略
17
:
◆uCbLPg/WnY
[saga]
2016/02/14(日) 22:40:07.34 ID:xDv5Ku3c0
無理に変わる必要も、変わろうと思う必要もないんだよ。
ではありがとうございました。
18
:
名無しNIPPER
[sage]
2016/02/15(月) 00:46:05.25 ID:F0TPQyvDO
おつ!森久保はかわいいなあ
19
:
名無しNIPPER
[sage]
2016/02/15(月) 12:31:00.07 ID:DMpwvIi8o
乙でしたー。
変わりたいけど変われない森久保も愛しい
すばらしいものをありがとうございます
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