過去ログ - 乃々「もりくぼと弱虫とチョコレート」
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6: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:27:01.51 ID:xDv5Ku3c0
鉄製の扉が目に入り、私はチョコレートをダッフルコートのポケットにしまい、事務所のドアを開けようとしました。
すると、中から賑やかな声が聞こえてきます。
他の皆さんの声に交じって、プロデューサーさんの声も。

「いやー、やっぱチョコレートは手作りに限るな!」
以下略



7: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:28:21.63 ID:xDv5Ku3c0
ピシィ、と。
もりくぼの中で何かが割れたような音がして、ドアノブを握ったまま動けなくなりました。
全然、そんなこと気にしてはいなかったのに。
言われても、私は不器用だからという言い訳まで用意していたのに。
いざ言われてみて、初めてわかる、一度私と向き合ってくれた相手の言葉。


8: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:29:37.15 ID:xDv5Ku3c0
「……」

ドアノブを握ったまま、しばらくの間呆然としていて。
向こう側からドアを押されてはっと気がついた時にはもう遅かった。
どしんと、尻もちをついて廊下に座り込んでしまいます。
以下略



9: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:31:27.67 ID:xDv5Ku3c0
金色のボブヘアーを揺らして、翡翠色の瞳が私を覗き込みました。
手には食べかけのチョコレート。
口元も、少し茶色くなっています。

「どしたの〜?あ、もしかしてプロデューサーにチョコー?だったらおいで〜。あたしも味見するから♪」
以下略



10: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:32:38.17 ID:xDv5Ku3c0
どうして今私は肯定しなかったのでしょうか。
何か、後ろめたい事でもあったのでしょうか。
……あったんでしょうね。プロデューサーに、手作りがいいと言われてしまったから。
ポケットの、苦々しい塊を、渡すことができなくなってしまって。

以下略



11: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:33:39.59 ID:xDv5Ku3c0
私が立ちあがり、歩きだしたのを見てフレデリカさんは事務所に戻って行きました。
……これでよかったんです。これで。
チョコは後でもりくぼが家で食べましょう。いつも頑張ってる自分に、少し高級なご褒美です。
これでいいんです。あの人だって、もりくぼからもらえるだなんて、きっと、きっと、思ってませんから。
これで―――
以下略



12: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:34:34.28 ID:xDv5Ku3c0
コートのポケットから、今やビターになってしまったチョコレートを取り出して。
行きと同じく、階段でじっと睨めっこ。
ただ一つ違う事はと言えば。
……弱虫が、足にまとわりついて、離れてくれないこと。
この弱虫を振り解けたら、
以下略



13: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:35:39.28 ID:xDv5Ku3c0
「乃々!」

後ろから投げかけられた声に、弱虫は一目散に逃げ出して、階段を1匹下って行きました。。
そして私は振り返りたくもないのに、振り返ることができてしまったのです。
そこには、しわだらけの背広に身を包んだプロデューサーさんが、立っていて。
以下略



14: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:36:50.66 ID:xDv5Ku3c0
困ったように首の後ろを掻くプロデューサーさんを見て、もりくぼは思わず声に出してしまいました。

「……さっき、チョコは手作りに限るって、プロデューサーさん言ってました。……もりくぼのは、手作りじゃありませんから……」

拗ねたような言い方になってしまったのは、きっとそれが私の本音だからで。
以下略



15: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:38:29.66 ID:xDv5Ku3c0
「手作りとか、買ったものとか、そんなの関係ないよ。俺は乃々がくれるって事が嬉しいんだ。乃々からもらうって事に、意味があるんだ」

そう言って私の手を取って言いました。
……ずるいです。プロデューサーさんは、やっぱり。

以下略



16: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/14(日) 22:39:24.62 ID:xDv5Ku3c0
「ただいま」
「おかえりプロデューサー。乃々ちゃんからチョコもらってきたの?」
「ああ」
「あたし達を置いて?」
「……ああ」
以下略



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