2: ◆68b3SKzuAs[sage saga]
2016/02/16(火) 11:13:57.60 ID:jzcgwpeqo
「ここじゃ冷えるよ。居間のこたつでのがいいんじゃない?」
「ううん。いや、うん…」
「? なに? どうしたの?」
「おねえちゃん…」
泣きそうだが泣いてない。
いや、押し寄せる不安に途方に暮れているのかもしれなかった。
手を握って欲しいと頼まれたが、至急ツボ押しで血行を良くしてあげた方がいいかもしれないな、と手を引き居間に促そうとしたら、今度は兄が暗い廊下に立ち尽くしている。
「お兄ちゃん、なにしてんの?」
いい年をしていう呼称では無いかもしれないが、一つ上の彼はいつまで経っても私の中では『お兄ちゃん』なのだ。
兄は暗がりの中で此方を伺っている。
無言ではない。息が荒かった。
ちょっと待て。何かがおかしい。
そもそも数年前に恋人と同棲をする為に実家を出た兄が、なぜ連絡も無くこんな夜更けにうちに居るのだろう?
「すぐ済むから」
そう言いざま兄は私から妹の手を取って居間に入る。
何がすぐ済むというのだろう?
というか、こういう時、兄を似たもの同士故に同族嫌悪してる妹がおとなしいのが変だ。
兄の名を呼び捨てし、幼少期は喧嘩の際に殴られても蹴り返していたような妹がおとなしく彼に手を引かれている。
大人になって我々も落ち着いたものだとこの間の正月に集まった際には笑い合ったものだが、そんな空気などでは無かった。
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