過去ログ - 姉「すぐ済むから」
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5: ◆68b3SKzuAs[sage saga]
2016/02/16(火) 11:17:10.38 ID:jzcgwpeqo
そこで漸く私は硬直から脱する事が出来た。
力任せに兄の肩を掴んで行為を引き止める。
仕事柄重い物を持ち運びなれ、出勤に往復15km自転車を漕ぐ私と、デスクワークで運動不足だと嘆いていた兄は体格で言うなら身長6センチ分以外そう大した差は無かった。

不意に、目眩を覚えて後ろに倒れる。
殴られたのだと気付いたのは、遅れてやってきた右目周辺の急激な熱さと、後頭部に広がる鈍い重みのおかげだ。
右側の視界がやや不明瞭だが見えない事は無い。
それよりも、無機質に此方を見下ろす兄の眼に、思春期の頃少しグレていた時の面影を見て気持ちが竦んだ。
私は体格や体力にそこそこ恵まれたものの、気質としては根本的には泣き虫だった。
大人になるにつれ、自身と他者の分別がつき、誰かに頼った所で所詮人は一人で死んで行くのだというちょっとした厨ニ的な悟り方(回り道)も経て、その泣き虫はいつの間にか私の心の中には居つかなくなったのだ。
その泣き虫が、再びいつこうとしている。

「お前は後でな」

あとで

後で、何をされるのだろうか。

緩慢な対峙の中、殴り倒された私を見た妹は泣き叫ぶのを忘れ呆けていた。
当たり前だ。大人にもなって兄妹でこんな喧嘩をしているのが信じられないのだ。
子供の時とは違う流血を伴ったものは未経験だったらしい彼女は、それだけでこの異常状態がより非現実なものに映ってしまったのかもしれない。
彼女と私の違いはまさにそこにある。
私は残念ながら流血を伴った喧嘩を被害者としても加害者としても経験済みだった。
今は、その被害者だった時の恐怖が身体の自由を再び奪っていた。


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