4: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/02/19(金) 14:47:40.36 ID:KdggYUJB0
最初に彼女と出会ってから、今年で十年になる。
当時十四歳だった彼女は、借りてきた猫のように大人しく、伏し目がちで、楚々としたその姿はどこかの国のお姫様のようだった。
どんな娘だろう、と気になって彼女に自己紹介をさせると、合わない目線はそのままに、か細い声で自分の名前を呟いて、それだけだった。
アイドルというものは、表現の仕方が悪いかもしれないが、多かれ少なかれ自己顕示欲的な野心を持っているものだと思っていた。
芸能界という荒波に呑まれないように、個性や容姿に突出した特徴を設けて、それを武器に戦うものだと。
しかし彼女の徹底的なまでの自己主張のなさは、それを逆に個性として運用していくもののようには映らなかったし、事実その通りだった。
だって彼女はアイドルでありながら、その実これっぽっちも野心など持ち合わせていなかったのだから。
41Res/19.59 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。