17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 15:54:54.60 ID:Z50vb1jJ0
それから互いの体液をウェットティッシュで拭き取り、汁まみれにしてしまった部屋を持ち込んだタオルで掃除して、大量に用意したファブリーズで匂いを薄めた。
後片づけを済ませてから、光がカラオケをしたいと提案してきたが、時間がないので却下した。
俺がこの店を選んだ理由だが、このカラオケボックスには内線がかからない。
予約した時間を過ぎても連絡されず、超過した分を払う方式なのだ。
歌うことに集中するのならこの方式もありがたいが、夢中になりすぎて払いすぎるのも考え物だった。
寒くなったサイフを抱えて駐車場に戻り、やはり光を後部座席に座らせる。
「あんなに声出した後に歌ったりなんかしたら喉痛めるぞ」
「そうだけど……そうだ! 今度! 今度の機会があったら、その時は普通にカラオケしよう!」
「今度をどうにかして作るからそれはいいとして、その時普通にカラオケ出来るのか?」
「い、今聞くのか! ……そういえば、まだ助手席には座らせてくれないのか?」
俺の意地悪な質問への返事に困って、光が露骨に話題を逸らす。
「まだも何も、今後も無いって。交通事故の時の死亡率が高いって、何度も言っただろ」
「むむむぅ……」
唸りながら光が錠剤を取り出した。俺の視線に気付いた光は、「わずかな可能性にかけて戦うのはヒーローだけじゃないからな」と笑った。
「笑えないっての」
「ん、そうか? ……いいかな」
「どうした」
「十年、十年だ。十年アタシにくれないか」
キーを差し込もうとする手が止まった。
続きを聞きたいと思うと緊張して、手が動かないのだ。
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