18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 15:55:57.03 ID:Z50vb1jJ0
「その時までに一人前になって、世間体とかも納得する歳になって、……その時が来たら、……もらってくれないかな、なんて」
「……いいのか。担当アイドルに手を出すような奴だぞ」
「それでも、アタシの好きな人だ」
ぱりぱりと薬を取り出し、水筒に入れていた真水でごくんと飲み込んだ。
「自分の全部に責任をとれる、本当の大人に、ヒーローになりたい。
そして、世界で一番大好きな男の人を、世界で一番好きな人たちに、胸を張って紹介したいんだ」
恥じらう様子もなく、光が真剣に、一手一手確実に詰めるように求婚する。
それは本来俺からするべきことだったのに、と悔しい気持ちが強くなる。
が、光に深く愛されてることを確認すると、やはり胸が痛いほど切なくなった。
先ほど散々確かめ合ったが、それとこれとは話が別だ。
「アタシを一人前にして欲しい。……そして、アタシの未来で待ってて! 絶対に、絶対に迎えに行くから!」
「……待ってる。じゃなかった、その未来ってやつに、絶対連れてくからな」
ヒーローは遅れてやってくるものだそうだが、待たせる女は悪女という慣例句もある。
見る度に違う煌めいた表情を見せる光はきっと、万華鏡のように観る者を吸い寄せる魔性の女なのだろう。
無論、今の光はシラフだから、パブリックイメージのままの元気な少女だ。
光自身も、自分に男を狂わせる素質があるとか、もう既に完全に狂わせてしまったのだとは欠片も思っていないだろう。
なら、なおさら隣に居続けたい。
この娘が望む景色を全てを見せ、何処までもこの娘について行きたい。
どうせもう、俺は二周り以上は年下の担当アイドルと貪るように楽しんだ犯罪者だ。
なら、汚してしまった少女に人生を捧げるのが筋だ。
「ありがとう! じゃあ早速、予約のステーキハウスに行きたいな!」
ステーキ肉を楽しみにした光が、足をパタパタさせて鼻歌を歌ってる。
獣欲に組み敷かれてこんな天真爛漫な娘と盛りあってしまったのだと思うと、罪悪感と背徳感からかまた海綿体の血行が良くなりそう。
逆に、この娘のあんな乱れた顔を知ってるのは俺だけだという優越も感じるのだから、俺はとことん救いようがない。
普通なら微笑ましくて頬が緩むはずの光景で欲情しかけた瞬間、光の腹がグゥと鳴った。
「……こ、これは、そう! 昨日食べた牛が鳴いたんだ!」
「ツッコまないからな」
「散々突っ込まれて運動したおかげで、お腹が減ったんだ!」
「親父ギャグで笑いをとろうとするな!」
最後まで言い切ったところで、俺の腹の中の牛も鳴いた。
俺たちを載せた車はきっと、外から見ても賑やかだっただろう。
近所迷惑に留意しながら、俺は二人の目的地に車を走らせた。 ・・
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