24: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:28:59.62 ID:Vnz/ww6s0
晶葉「それは、理解できないことではない。単に、Pの理解が追いついていないだけだ……来たまえ。会わせてやろう、私の恩師に。このカーテンの向こう側にいる」
P「……」
晶葉「といっても、君達の知っている人だろうがな」シャッ
25: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:29:59.78 ID:Vnz/ww6s0
まゆ「ええ、Pさんの香りが、まるで違いましたから。前に顔を近付けたときから、わかってましたよ」
P「なんだよ、これ……どうして俺が、横たわって……」
志希「本物とか偽物って、どういうこと?」オロオロ
26: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:31:05.00 ID:Vnz/ww6s0
晶葉「平行世界からPが抜け出るとき、君は願った。もしも俺が消えたら、と。そして君は、この世界に戻ってきた。そうだな?」
P「ああ、間違いない」
晶葉「それがそもそもの間違いだ」
27: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:31:53.72 ID:Vnz/ww6s0
志希「自分を納得させるため、ってこと?」
晶葉「そうだ。まるで一つの物語を作るように、Pはそんな世界を作り上げた。それができてしまうほどの理論を、組み立てることができた」
晶葉「さて次だ、この部分……卯月と凛が事務所に入ってきた音が聞こえ、Pはそちらに向かう。そしてドアを開け、研究室から姿を消す――そのあとに、Pが聞くことができないはずの、私の台詞をPは拾っている。たとえやり直しなどきかなくても、必ずハッピーエンドにしてやる……とな」
28: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:33:11.99 ID:Vnz/ww6s0
まゆ「ある程度自分の思ったことが実現する夢のことですよねぇ? 前に調べたことがあります」
晶葉「そうだ。Pは、夢の中に閉じ込められていると言ってもいい」
晶葉「それでだな、P、君の正体だが」
29: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:34:53.65 ID:Vnz/ww6s0
P「そう、か……俺は偽物なのか」
晶葉「君の中の意思と呼べるものも、本物のPの記憶から導き出されうるものに過ぎない。つらい思いをさせたな」
P「いや……何か知らんが、妙に落ち着いてる」
30: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:37:57.18 ID:Vnz/ww6s0
院長「……長い夢の中にいます。緩慢な夢の中に。彼の五感は、ひどく退化してしまっています」
院長「夢の中では、現実世界にいるよりも時間がずっと遅く流れます。彼は今、夢の中で八十年近く過ごしているのです」
晶葉「肉体に異常はなくとも、精神だけが刻々と時間を刻み、Pを老い衰えさせていく。Pの精神は、着実に死へ向かっている。そしてPの精神が死んだとき――すなわち夢の中で老衰による死を迎えたとき、Pは死んでしまう」
31: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:39:50.97 ID:Vnz/ww6s0
晶葉「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わないか。私もそう思う。私の判断でPを死に至らしめてしまうのなら、私はそれを止めなければならない。Pの死を、なかったことにしなければならない」
晶葉「だから私は、装置を造ったんだ。Pを眠りから覚まさせるための装置を」
院長「彼の容体はひどい。一般の患者に当てはめるとするならば……この現状は、脳死に近い。もしもそれを救う手立てがあるというのなら、病院が彼女を支援することに異論はなかった」
32: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:41:44.36 ID:Vnz/ww6s0
晶葉「八十年の中で鈍麻してしまった感覚に確かな刺激、意図せぬ刺激を与え、本来の世界を思い出してもらう。その刺激には、P‐492Mに蓄積された、Pの知らない記憶を使用する」
晶葉「ケーブルでPの装着している平行世界体感装置とP‐492Mとを繋ぎ、そして偽物の八十年の記憶のファイルを全て削り取る。これが成功しなければ、打つ手はもうない」
まゆ「それで造ったのが……この大きな装置なわけですか」
33: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:42:20.28 ID:Vnz/ww6s0
晶葉「もうなりふり構ってはいられないんだ。Pの脳波が消えてしまう前に、装置を使わなければならない」
晶葉「……良いだろうか、みんな」
晶葉「私の装置は、今この瞬間Pを救うのかもしれない。或いは、死なせてしまうのかもしれない。それでも、良いだろうか」
34: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/02/28(日) 11:43:06.67 ID:Vnz/ww6s0
晶葉「っ、」
P「俺は偽物だが、本物の俺と同じ記憶、生き方を持ってる俺が言うんだ。やってくれ。なんなら、俺がスイッチを押してもいい」
晶葉「いや……っ、これは、私の発明が引き起こした事態だ。私がやらなければならない」
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