過去ログ - 志希「フレちゃんがうつになりまして。」
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10:名無しNIPPER
2016/02/29(月) 15:35:53.70 ID:/e3tjpcqo
 あたしの宮本フレデリカ評。
 なにもないつまらない、まっさらなキャンバスに七色の色彩を描ける子。要約させていただくとまぁ、大体そんな感じ。
 どこからともなく、“面白さ”とか“喜び”とかの絵筆を拾ってきて、テクニックもディテールもしっちゃかめっちゃかなのに兎にも角にも立派な絵画にしてしまう。
 あーゴメン、まぁ時には作品にすらならないときもあるんだけれど、それでもフレちゃんは絵具まみれになりながらけらけらと笑ってのける。あはは、楽しかったねーなんてとても満足そうに。
 だから、フレちゃんはいつだってどんなときだって、きらきらと輝く絵筆を見落とさないように笑って日々を過ごしているのだ。
 ライブといえば、そんな光のかけらがいっぱい落ちていて。フレちゃんがいつも、なによりも心待ちにしているものだった。

 そんなライブに、出たくないと、フレちゃんはたしかに言った。
 こないだのライブの前夜には楽しみで楽しみでしかたなくてご褒美のボンボン・ショコラを先取りしちゃった、なんて写真を送ってきたフレちゃんが。

 ほわい?

 なんとか原因を究明しようと思考をぐるぐる巡らせていると、不意にひびいたノックの音で、あたしの脳内方程式は中断させられる。
 みやればそこには、ふくふくと頬っぺたをふくらませたご満悦なプロモーターさん。
 レイジー・レイジーをたいそう気に入っていて、都心にビルが建つくらいのお金を投資してくれたっていうとてもお偉いお方、なり。伝聞。

「いやぁ、もうすぐ開演だね、君たちはこれまで本当に私の期待以上の成果をあげてくれたよ」

 あたしの興味は彼にはなくて、どっかの本に記されていた処世術を駆使して挨拶を懇切丁寧そこそこに終わらせる。
 そーりー、とてもお偉いお方。お詫びは志希ちゃんスペシャル惚れ薬なんかでどうですか、なんてあなたにとってはスキャンダルに発展しかねませんね。
 ちらりと脇を見やる。フレちゃんは机につっぷして、ぴくりとも動かない。

「この公演には企業一丸となって力をいれていてね、今までの集大成のようなものなんだ、よろしく頼むよ」

 電池が切れたようになんの反応も示さないフレちゃん。
 フレちゃん、喋れない? ……。ふむ。そっかそっか。わかったわかった。
 それじゃあたしが代わりに、言ってあげるね。正解か間違いかは、フレちゃんと神のみぞ知るー。

「あの、あたしからひとつ要望があります」

「おぉ、どうしたんだね、一之瀬くん、なんでも言ってくれたまえ」

「大変申し訳ありませんが、宮本フレデリカ、一之瀬志希、両名ともライブの出場を辞退したいのですが」

「……なんだと?」

 にこにこしてた恵比寿さまのようなお顔がとたんに崩れていって。
 わお、こんなとこから鬼が出てきたねー。


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