過去ログ - 志希「フレちゃんがうつになりまして。」
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5:名無しNIPPER
2016/02/28(日) 23:58:38.42 ID:QoZsjp9vo
 きっと、やっとの想いで絞り出せた言葉だったんだと、思う。
 混じりっけのない天然モノの金髪をぐしゃぐしゃにさせて、グリーンアップルの瞳をぐらぐらに揺らしてフレちゃんはたしかにそう言った。
 それでも、いつものように笑いながら呟くものだから。誤魔化すように、いつもの鼻歌を必死に鳴らすものだから。
 その場にいただれもかれもが、その異常性に気付かなかったのだ。あたしも含めて。

「あははっ、フレちゃーんまるであたしみたいなこというんだねー。あたしはいつでもお空飛んで趣味のお散歩したいなぁって思ってるよー。みんなは失踪とか徘徊とかいうけどねー。でもこれからライブだしー」

「ライブ、ライブ、そっか、これからライブかぁ」

「そそっ、まぁワイヤーで吊り上げて上空から登場するって仕掛けも面白そうだしできそうだけど、あんま無茶ぶりするとまたスタッフに困ったやつみたいな顔されるし、ただでさえあたしが変なことしないかマークされてるんだよねー」

「ライブ、ライブ、ライブ……あーそっかぁ、ライブかぁ、あれ、ライブってなんだっけ?」

「えーまたフレちゃんそういうこというー? 日本語で演奏会、フランス語でコンセール、スペイン語でムジカのライブだよー」

 ぼんやりと何もない空間をみつめながら“ライブ”という言葉をぶつぶつと繰り返すフレちゃん。
 むむ、なにがそんなにフレちゃんセンサーに引っかかったんだろう。
 
 フレちゃんはたまに街を歩いてると突然爆笑することがある。
 なにがそんなに面白いのかときくと、炭酸ドリンクの広告看板のさわやかなスポーツマンにチョビヒゲを脳内で足してみたらどうなるんだろうと考えて実際に足してみたら、それはもうとってもお似合いだったらしい。
 こんなに面白いのならスポーツ選手は全員チョビヒゲをくっつけて試合すればいいのに、そうすれば選手も観客もみんな笑顔になって世界平和だよねーハッピーニューイヤーだねー!と、真夏にフレちゃんはひとりで新年を迎える。
 
 今回もきっと、フレちゃんは独自の宮本フレデリカ理論を駆使して、ライブというとりとめもない単語にとびきりの楽しさを与えるんだろにゃあ。
 あたしはちょっぴりワクワクしながら次の言葉を待っていた。どこからなにが飛び出してくるんだろう。
 鬼が出るか蛇が出るか、なんてフレちゃんから飛び出すものはいつだって、もっとポップでファンシーなものなのだけれど。


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