過去ログ - 京太郎「男子が混ざったっていいじゃないか」全国編
1- 20
30: ◆2nrFb/cgFg[saga]
2016/03/06(日) 21:54:40.81 ID:3gm8Hq2Do

「須賀京太郎さんですね? 次ですから、お急ぎください」


 舞台袖に入ると、スタッフさんに急かされてしまった。確かにかなり悠長にしすぎたようだ。

 ぱらぱらと枠は埋まっているが、全部の番卓に空きがある状態。

 舞台では俺の前の少女がクジを終え、司会進行役の男性に番号の書かれたボールを渡している。

 スタッフさんに促され、俺は袖からライトアップされた舞台に足を踏み出した。

 瞬間、それまであった悲喜交々のどこか和やかにさえ思える雰囲気は霧消した。

 刺々しい視線が全周囲から刺さる。異物を見つけ、敵意を剥きだしにしている。

 そう、俺はこの抽選会場でも数少ない男。スタッフや観客にも1割くらいは男性がいるからだ。

 だが彼らは選手ではない。俺は彼女たちの敵としてこの場にいる、唯一の男なのだ。

 それが嫌でも分かる。侮る視線や馬鹿にしたような雰囲気。

 陰湿ないじめの現場の空気はこんなものなのかもしれない。

 ――無論この程度で怯むわけがない。

 視線を向ければこちらを心配そうに視線を泳がせている久さん。

 クジを引いているときよりもよほど一大事のような様子だ。

 そして選手列のほうを見れば心強い仲間たちと、ライバル。

 いつものようににっこり笑顔の憩さん。

 他人には見咎められないからと腕を振り上げている桃子。

 心配そうだが信頼のこもった視線を寄越す数絵。

 この程度で怖気づくの、と挑発的な絃さん。

 一歩一歩、俺は抽選玉の入った箱に歩みを進める。

 好戦的な笑みを浮かべそれを見る染谷先輩。

 絶対負かす、と叫んでいる優希。

 頬を赤らめさせ、胸元で手を組んでいる和。

 京ちゃんなら大丈夫、と安心した様子の咲。

 そして――そしておろおろとチームメイトを気にしながらも俺を見上げる、淡。

 そう、淡だ。俺と桃子はこいつと一緒にいるためにここまで来た。

 箱の前で立ち止まり、一度淡を見る。視線があった。

 俺はその視線を一度切り、一呼吸。そして箱の中に手を入れた。

 邪魔はさせない。半年前の俺ではあいつを満足させてやれなかった。

 でも今は違う。だから掴んだボールを持ったまま、確信をもって淡に突きつけるように腕を伸ばした。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
918Res/1493.75 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice