5:名無しNIPPER[saga]
2016/03/10(木) 00:22:17.06 ID:zYmr7NGw0
男「お待たせしました」
青年「これは……」
青年(白い器に、スプーン。そして、大きく膨らんだ……パイ生地?)
男「私からのサービスです、冷めないうちにどうぞ」
青年「あ、ありがとうございます」
青年(この匂いの正体は……一体)サクッ
ホワッ!
青年(……これは、シチュー……いや、あさりが入ってる。クラムチャウダーか!)
青年(すごい熱気だ……)スッ
青年「! うまい……!」
青年(とろみがある熱々のスープは、バターのコクが良く出ていて)
青年(とろとろに煮込まれた玉ねぎ、ほくほくのじゃがいも、そしてあさりの旨みが溶けこんで)
青年「……暖かい……」
男「……形あるものは、いつか壊れてしまいます」
男「しかし、別れとは同時に「思い出」が芽吹く瞬間でもあります」
男「桜が咲くのは一瞬です……しかし、それは散った後、生き生きとした葉桜になります」
男「人生の移ろい、そして成長……桜はそれらを教えてくれます」
男「私は、そんな桜が好きです」ニコ
青年「……」
男「……差し出がましい事をしてしまいましたね、お代は結構ですから――」
青年「……いえ、そうですよね」
青年「過去に縛られてるだけじゃ、何も変わらない」
青年「このクラムチャウダーだって、パイ生地が壊れても、中から暖かいスープが見えてくる」
青年「そう言いたくて、これを出してくれたんですよね」
男「……」ニコ
青年「すみません。どうもこの季節はセンチメンタルになっていけないや」
青年「ずっと籠ってた思いが出てすっきりしました……今度、故郷に行ってみようと思います。もう何年も戻ってないし」
男「ええ、それが良いかと」
青年「……ごちそう様でした、また来ます!」
男「ありがとうございました」ニコ
少女「……」ガチャ
青年「ああ、ありがとうね」
少女「……」フリフリ
青年「ばいばい」フリフリ
青年(……雨も止んだな)
青年「よし、頑張ろう!」
少女「……」
男「ああ、元気になったようで良かったよ」
少女「……」
男「はは、彼が気に入ったのか……きっと、また来るよ」
少女「!」ニコ
男「……雨も止んだようだしね」クス
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