過去ログ - 俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』
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[sage]
2016/06/24(金) 01:03:48.19 ID:3d9qV1+j0
結衣「ふたりとも、もっと寄らないと入んないよ?」
由比ヶ浜の声に、反射的にお互いの位置をよく確認もせずに寄ってしまったせいで、思いがけず触れ合わんばかりに距離が詰まってしまった。
「え?」「や?」
驚きのあまり至近距離で顔を見合わせたまま、ふたりして硬直してしまう。
美しく整った顔だち、磨きぬかれた大理石のようになめらかな白い肌、濡れたような漆黒の髪と同じ色を湛えた美しく大きな瞳。
実際に雪ノ下と向き合っていたのは、ほんのごく僅かな時間に過ぎなかったのだろう。だが、俺にとってのそれは、まるで永遠を凝縮させたかのような密度と濃度があったかのようにさえ思えた。
シャリーン
小銭が落ちたかのような澄んだ機械音に、まるで何かの魔法が解けたかのように我に返り、互いに無言で一歩ずつ離れて距離をとる。
一拍おいてふわりと漂う、サボンの香りが、今の一瞬を殊更強く印象づけ、余韻を残す。
俺はそのまま意味もなく仰け反るように天井を見上げ、雪ノ下も俯くかのように床を見下ろす。
妙に火照ってしまった顔を見られまいとして、さっさと背を向けてしまったので、彼女が今、どんな表情をしているのかまではわからない。
――― ほれみれ。やっぱり魂奪われちまったじゃねぇか。
心の中でそっとひとりごちる俺の耳の奥で、やたらと騒がしく響く鼓動を落ち着かせ、雪ノ下の顔をまともに見ることができようになるまでには、まだしばらく時間がかりそうだった。
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