過去ログ - 俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』
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497:1[sage]
2016/07/02(土) 02:18:25.74 ID:1FYr1HPy0

駅の近くまで来ると、さすがに人通りも多くなり、すれ違う通行人が不思議そうにチラチラとこちら見る視線が気になりはじめる。

先ほどから俺もなんとはなしに漠然とした違和感を覚えていたのだが、すぐ隣を歩く雪ノ下の存在にずっと気をとられていたあまり、それどころではなかったというのが本音である。


雪乃「ありがとう。お陰に制服を濡らさずに済んだわ」

立ち止まった雪ノ下が、開いたままの傘を俺に向けてそっと差し出した。

八幡「や、俺はいいから…」 

俺が断ろうとするのを彼女が掌で優しく押しとどめる。


雪乃「いいのよ。だって ――― 」


小さく振られた首に併せて肩にかかった黒髪がさらさらと揺れ、その唇が小さく動いて言葉を紡ぐ。

言われて初めて先程からの違和感の正体に気が付き、俺は咄嗟に傘を下ろして空を見上げた。


――― いつの間に?


驚いて視線を戻すと、雪ノ下の姿は既に改札へと向かう人影の中へと紛れ込んだものか跡形もなく消え失せていた。

ひとり残された俺の頭上で、街灯がチカチカと数度瞬いてから明かり灯し、雲の隙間から覗いていた小さな光の粒を隠してしまう。

暫くして自転車へと向かう俺の瞼には、先ほど雪ノ下が浮かべた悪戯っぽく、それでいて少しだけはにかんだような笑みの残像が、いつまでも消えることなく残っていた。




「だって ――― とっくに雨は止んでいるんですもの」





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