過去ログ - 俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』
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959:1[sage]
2017/02/07(火) 20:32:39.52 ID:TOi7eAsx0


「 ―――――― 陽乃?」


静かな、それでいてよく透る厳かな声が店内に響いた。

凛とした佇まい、楚々とした和服姿、高く結われた髪。あたりを払う堂々とした振舞いから放たれる圧倒的な迫力。順当に年を重ねれば恐らくは雪ノ下もいずれなるであろう、威厳の伴う美貌。

雪ノ下と陽乃さんの母 ―― 雪ノ下母、つまりは、ははのんである。

彼女が入ってくるや否や、まるでその姿が磁力でも帯びているかのように俺を含め、店内の客の視線がそちらに吸い寄せられるようにして集まるのがわかった。

それまで好き勝手に交わされていた会話や雑多な喧騒が収まり、店内を流れるBGMが急に音量を増したかのような錯覚すら覚える。


「 …… 誰?」 「 …… 女優?」


離れた位置から囁く客の声が俺の耳にまで届く。
明らかに称賛の目を向けられることに慣れきった者の態度で、ははのんはまるで無人の野を征くが如くこちらに向けて歩を進める。

そして、改めて俺の存在に気が付くと、その面(おもて)にごく微かにだが、何か、驚きのような感情が漣(さざなみ)のように過った。

だがそれは、自分でいうのもおこがましいが、人間観察のスペシャリストを自認する俺であるからこそ気の付いた、ほんの僅かな変化に過ぎない。




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