10:名無しNIPPER
2016/03/12(土) 04:12:14.59 ID:mEcRfjijo
バンッ、と無意識に机を叩く。一瞬にして頭に上った血が、罵詈雑言を浴びせようとする。
……寸でのところで留まったのは、まだ話が終わっていないから。
続きがある。それを聞くまで、冷静でいなければ。
「ですが、ファッションデザイナーとしては、です。あなたは衣服を作るとはどういうことだと思いますか?」
「……例えば、その人に似合うものを作ったり」
「ええ、そうです。では、その似合うかどうかを考えるのは誰でしょう」
「顧客……。えっと、買い手、です」
「服というのは顧客が選ぶものです。自分によいものを、つまり、ベターなものを組み合わせていくわけです」
「モアベター、ですか」
「はい。あなたのデザインは、おそらく、特定の個人に向けてデザインしたものではありませんか?」
心当たりがないわけではない。むしろ、誰かにとって最高のものを作るのがことりの仕事だった。
……ああ。つまり、そういうこと。
「誰かにとって最高のものは、別の誰かにとってベターにすらならない」
良く出来ました。と老人が笑う。
「極論ですがね。あなたはどちらかというと、こっちよりの人のようですから」
「こっち、ですか?」
「仕立屋……オーダーメイドに携わる方ですよ。職人と言い換えることもできますが」
よろしければ、と老人は前置いて、ことりの手を取る。
「私の元で修行をしてみませんか?」
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