過去ログ - 【凡将伝】どこかの誰かの話【三次創作】
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689:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga sage]
2017/04/20(木) 23:14:14.14 ID:z0sWtQrgo
「ほ、ほ。
 そう身構えるでないわ。
 知らぬ仲でもなかろうに……」

声の主は袁胤。
袁家の非主流派の領袖にして、かつては袁家を継ぐと目されていた人物である。
そう、本来であれば袁逢ではなく彼が袁家の当主となっていたはずだったのだ。
そう。匈奴戦役さえなければ。

「まあ、貴様を呼び出したのは他でもおじゃらぬ。
 麿は汝南に赴くことになっておじゃる。
 そこで、よ。
 貴様も汝南に来い、ということじゃ」

あくまでその物言いは傲岸不遜。相手の心象なぞ歯牙にもかけない。

「何故、とな?
 決まっておるわ。
 汝南に道を敷き、河川を平らかにするためよ。
 それは貴様の職責であるでおじゃろう?」

やれやれ、といった目線を向けながら言葉を続ける。

「知っての通り、麿の配下は実務に疎い者が多いでおじゃる。
 ほ。
 餅は餅屋とはよく言ったものでおじゃるな」

ほ、ほ。と笑みを浮かべてはいるがその目は笑っていない。

「ほう、ほう。不服でおじゃるか。
 じゃがの、汝南はいずれ美羽の根拠となる地でおじゃるよ?」

あくまで言葉は柔和。しかしてその目は鋭く。

「なに、別に麿の派閥に入れというわけではおじゃらん。
 あくまで、そう。
 美羽のためにその腕を振るってくれればいいことよ。
 今更、周囲からどう思われようとも気にする貴様でもないでおじゃろう……?
 美羽は麿にとっても可愛い子よ。じゃからの、汝南を整えるのは美羽のためであるのじゃよ……」

ほ、ほ、と。
その笑みはあくまで雅に響く。含む黒さなぞ感じさせない。

「何、貴様は最近巻き込まれつつあるややこしいことから逃げられる。
 そしてやりたいことができる。
 麿も汝南を整えられる。
 結果、民もその利便を享受できる。
 実に結構なことでおじゃろう……」

「ほ、そうでおじゃるな。
 表面的には貴様が麿の派閥に入ったように見えるであろうなあ。
 じゃが、何か問題があるのでおじゃろうか?
 大体、じゃ。田豊とすら殴り合いをする貴様よ。
 そんな小器用な動きができると誰も思わないでおじゃるよ」


「ほ、ほ。
 無論即答なぞせんでよいともよ。
 じっくり。そう。
 じっくりと考えてほしいものでおじゃる」

ぽん、と手を打つのを合図としてか。
場に使用人たちが入り、酒肴を並べていく。

「硬い話はこれまででおじゃる。
 貴様もいけるクチでおじゃろう?
 ……ほう、ま。それもよかろうよ」


ほ、ほ。と。
笑い声が室に響くのであった。


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