過去ログ - 【凡将伝】どこかの誰かの話【三次創作】
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700: ◆e/6HR7WSTU[sage saga]
2017/05/06(土) 20:30:57.60 ID:TW2BINYZ0
「横着様、最近街で流れている噂を御存知ですか?」

沮授殿と書類の決裁に追われている中、唐突に沮授殿がこんな事を尋ねてきた。

「というと、『南皮城内にえらく厳つい禿が居る』ですか?」
「何ですか?そんな噂どこから出ているんですか?」
「では、『母流龍九商会の当主がついに身を固める決意をしたらしい』ですか?」
「……個人的には真偽と内容を深く追求したいところですが、違います」

「『天の御使いが中華に降りてくる』というものですが」
沮授殿も半信半疑という表情でそれを口に出す。
「それは、洛陽から勅使が来る。という暗喩ですか?そのような事は奥から回ってきてませんが?」
「そうでは無いようですが」
「では、神仏が南皮に何か求めに来る。とか?……神仏が手に入れたいと思うものが有るのですかね?」
「横着様、茶化すのはいい加減……」

さすがにむっと来た顔の沮授殿だが、私の顔を見て絶句する。

「沮授殿、その噂なら知ってますし、内容も把握してます。……ですが、他領は知りませんがこの袁家が治める諸州は、上は袁紹様、袁術様。その下の主要六家。さらには名もなき役人まで、皆の努力で平穏を保っております。
無論、細かきところでは様々な不平不満や貧富の差もあるでしょう。
ですが、飢えや命の危険に晒されることは皆無とは申しませんが非常に低くなっております。
このような中で、何故救いを求めるような噂が流れるのでしょう?はっきり申し上げて袁に対する謀略と変わらない噂です」

多分切れているのが表情に出ているだろうな。だがな、この噂と内容を聞いたとき得物片手に飛び出しそうになったぞ。
楽土。とはいわんが、少なくとも戦乱や荒廃とは無縁で働けばその日をしのぐことは出来るくらいの活力はある。
さらに治安も他の街とは段違いに安定しているとそう言い切れるくらいは落ち着いてはいる。

それは誰がそこまで成し遂げた?領主たる袁家と、建策した紀家、そしてそれを形にして実行した田豊様やここに居る沮授殿を始めとした官僚達だ。
人間の集合体で成り立っている場所だから、南皮に居る全員から高評価を得られるとは思っていねえしまた完全な安全安心な生活なぞ不可能だ。
だが、依然増え続けている他所からの流民に職を与え、稼ぎで糊口をしのげるくらいは安定させている。
また、悪質な賊の類は兵の調練も兼ねて定期的に殲滅している。黒山賊という例外はいるが、奴らの内部でもなにかあるのだろう、凶悪な奴らは急激に減少している印象を受ける。

そんななかで、後ろ向きな救世思想なぞばらまかれるとはっきり言って迷惑でしかない。
最悪はどのように扱っても不満しかない層を吸収して内乱になる。
そうなると、今までの努力を崩壊させてしまう。


……成程、どこの策士か知らんが随分と嫌味な事をしやがる。


手を休めず、沮授殿に見解を話すと同じく手を休めず聞いていた沮授殿、
「確かに噂そのものが謀略である可能性は考慮の範囲内ですね。しかし、こちらで探っても発信源が確定できないくらい自然に流布されている噂なんです。
正直、様子見というよりはどう取り扱うか考えあぐねている状態ですね」
「まぁ、本当に『天の御使い』とやらが降り立ったら南皮の名産でも持たせて天に追い返しますか」
「横着様、好きですね。それ」

おっさんだからな。駄洒落でも言わんとやってられん。




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