過去ログ - 【凡将伝】どこかの誰かの話【三次創作】
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990:俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU[sage saga]
2018/07/01(日) 16:02:45.22 ID:CFr8g18v0
ちょっとだけ

「あんたごときが分かった気になって、上から目線で偉そうに言ってるんじゃないわよ!
 ああもうやだ!こんな男と同じ空気を吸ってると思ったら絶望しかないわ。
 アンタ、目障りだからそこから身投げの一つでもしてみなさい。
 それくらいで死ぬことはないでしょうし」

ある日、荀ケ殿と意見の相違から半分口論となった。で、荀ケ殿から上の様な言葉が出たのだが。
(んー、どれどれ?)
窓から気楽に身を乗り出して、地上との間を目算する。荀ケ殿がこちらに突貫して来る可能性もあったが、張家から狙われている日々を過ごしていると昔の常在戦場の意識が復活し背後の荀ケ殿の気配も十分に感知出来るのでそのあたりは全く気にしていない。
第一、身体能力に差がありすぎて万一の場合向こうが嫌でも受け止めないと大惨事になる。
(ふむ、結構差があるな。が)
素早く目算と落下地点周辺の状況を覚える事を済ますと、
「では、お望み通り」
窓枠に足を掛けるとそのまま流れで飛び出す。一瞬、身体が浮く感覚を覚えるがすぐにぐんっ、と下に引かれる感覚が取って代わる。
見る見る地面が近づく。が、
(そこっ!)
窓直下からほんの少し右側に太い枝を伸ばしている木に身体を挙動で寄せると、無理やり見えている枝を掴む。
ミシリ。
嫌な音が響く。
(頼むぞ、おい)
そう心中で念じながら枝を両手で摑まえることになんとか成功、私の体重と勢いが乗った重みで更に枝が撓む。だが、
(よい、しょおっ!)
枝の撓みを利用して、次の足場へ移動する事に成功した。後は体勢を整えると、枝と幹を利用して地面へ降りる。

「おー、結構ありやがるな。俺もまだまだ鈍っちゃいねぇな」

地上から窓を見上げ一人頷いていると、窓から荀ケ殿が顔を出し何事か怒鳴っている。
「……なの?あんたは!これだから……は……だというのよ!」
(うーん、望み通りに身を投げたのだが。それでもお怒りとは、いや頭の良い女性の思考はよく解らん)
首を捻っていると、

「横着さんって、やっぱり猿だったんですねっ!」

後ろからそんな声を掛けられた。ぎょっとして振り返ると……
声の主である許緒殿が瞳を輝かせながら私を見上げている。
「ええとですな、まさか最初から……見ていた、とか?」「はいっ!城内を巡っていると丁度人が窓から飛び出したのが見えたので」
「それでですな、その……」「大丈夫ですっ、夏候惇様と曹操様にはちゃんと報告しますから」
(や、やめてくれ。碌な事にならん)

後で曹操様以下首脳陣に問いただされる事、その後にある私にとっては不都合な問答が待っているだろう事を思うとげんなりする私と、相変わらず瞳を輝かせて私を見上げている許緒殿と、折からの風に葉ずれのざわめきを起こした大木がそんな二人を前に立っていた。





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