538: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/01(木) 23:31:17.52 ID:0CmWCKBVO
>>537 はミスです。
胡桃「……たぶん、あいつらだから」
呆然とハンドルを握ったままにしている美紀に胡桃はしぼりだすように慰めの声をかけた。おそらく、犬かなにか、動物が飛び出してきたのだろうと胡桃は考えた。“かれら”はあんな速さで動くことはできない。出会い頭の衝突事故はこの世界ではずいぶんめずらしいものになっていたが、事故を起こした運転手の動揺は変わらないままだった。
美紀は息を止めていた。由紀は頭にクッションをかぶってふざけたことを後悔し始めていた。エンジン音だけが持続する状態が数秒続いたあと、外から「いってえ……!」という男の声が聞こえてきた。
美紀「人じゃないですか!」
胡桃「あっ、待てって、美紀!」
永井「いまの声……」
胡桃に抗議したかと思うと、美紀はもう外に飛び出していた。胡桃は、悠里に由紀といっしょにここに残るように言い残し、美紀のあとを追った。続いて、永井が歩いて外に出ていった。
地面に倒れていた男は永井と同じくらいの年齢で、背負っていただろうバックパックを支えにして上半身を起こしていた。胡桃が男の側により、痛みのある箇所を質問している。男の意識ははっきりしていて、脂汗を滲ませながらも胡桃の質問にきちんと答えていた。美紀は胡桃の後ろから不安そうにその様子をのぞき込んでいた。とりあえず命に別状がなさそうですこしは安堵していたものの、胡桃を手伝ったり、医療品を持ってくるという判断ができないでいた。加害者としての罪悪感が、美紀に見守る以上の行動を取らせなかった。
永井はその様子を見てもなお、歩く速度を変えなかった。永井が男の顔を確認できる距離まで近づくと、男も同様に永井の顔を見ることができた。男のは永井の顔を見た瞬間、あっ、と声をあげた。思わぬところで顔見知りに再会したときに出す声とは、このようなものに違いない、そう思わせる声だった。永井もその男の顔が、見知ったものであることを確認した。
永井「やっと来たか、中野」
中野「永井!」
584Res/446.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。