541: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/01(木) 23:34:49.19 ID:0CmWCKBVO
『シンドラーのリスト』で、後頭部を撃たれてクニャッと身体を曲げ地面に倒れるユダヤ人を模倣するかのように、中野も同じような脱力を示し地面に倒れた。あの映画の銃殺が、撃つ側と撃たれる側を同一画面に収めたワンカットで捉えられていたように、胡桃と美紀の目にも、永井が中野を射殺する瞬間は、持続する時間のなかでのひと続きの光景として映った。
胡桃「おまえ……なにやってんだよ!!」
困惑と怒りが入り混じった声で、胡桃は永井に詰め寄った。美紀は目の前で起きたことが信じられず、口を開けその場にしゃがみこんている。美紀は、自分の運転で永井の仲間を轢いて跳ね飛ばしてしまったことに対するショックの気持ちが、永井本人によってなかったことにされるどころか、ますます巨大な、つかみどころのない状態へと変えられてしまった。
自らが引き起こした事態に対する脳の反応は色々なものがあるが、今回の美紀の場合、それは当然ながら罪悪感と呼ばれる精神状態を生み出す回路が働いたことはまず間違いない。その回路は、永井の「いっしょに行動してた」という発言によって、ますます強く働いた。それは責任を感じる対象が中野ひとりから中野と永井のふたりになったためだが、その対象がもうひとつの対象を射殺してしまった。
いったいなんという状況なのか! このような事態に対する思考様式など、わたしは持ち合わせていない。しかし、状況は思考を要求している。わたしは思考を深めねばならない! この声は自我の声というよりエスに反対する超自我の声、または象徴界からの要求だろう。
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