過去ログ - ゆき「亜人?」
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557: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:19:52.32 ID:e9pvm4lpO

戸崎と下村は休憩スペースから離れ、割り当てられた業務用の一室にむかった。白っぽい、無味乾燥とした廊下ですれ違うものはだれもいなかった。施設を自由に行き来できる収容者は限られていたため、ある特定のスペースには雑然と人でごった返しているのに、その他、施設のほとんどのスペースは無菌室のように白く閑散とした空白ばかりが目に映るといったありさまだった。

戸崎は部屋にむかいながら、現実問題として、佐藤と戦える猶予はそう残されていないと考えた。人的資源も、物的資源も、時間経過に比例するように減ってきている。そういった資源の減少がなくとも、日常が一変し、外に出ることはかなわず、一か所に押し込められ、外に出れば“かれら”の群れにはらわたを喰われることを覚悟しなければならない、そんな状況では精神的に磨耗するしかなかった。時間がたてばたつほど、われわれは弱くなっていく、と戸崎は思った。

戸崎が部屋の前につくと、ドアにメモが貼ってあるのをみつけた。手にとってメモの内容を読む。戸崎はメモを下村に渡し、書かれている内容を読むようにうながした。


下村「戸崎さん……!」

戸崎「ああ。永井圭の潜伏地域がわかった」


二人はすぐさま身体を翻し、また別の部屋にむかった。


下村「やはり、巡ヶ丘市内に潜伏してたようですね」

戸崎「ヘリが消息を絶った地点に調査隊を送り込んで正解だったな。IBMのものと思われる痕跡があるとは予想していたが、血液が残されていたのは僥倖だった」

下村「しかし、すでに市内から脱出しているのでは?」

戸崎「永井はバカじゃない。このような状況なら、先を見越して自らが有利に立ち回れるような行動をとるはずだ。マニュアルを入手しているのなら、行き先は予測できる」

下村「しかし、われわれに協力するでしょうか?」

戸崎「させてみせる。そのための切り札は、こちらにある」


二人は目的の部屋の前についた。中に入ろうとしたとき、ドアノブに手をかける戸崎の顔に、一瞬、憂い表情が浮かんだのを下村は見逃さなかった。戸崎の身に沈んだ憂いは、ドアを開ける手の動きを通常より遅らせ、下村が戸崎に声をかける時間を作り出した。



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