過去ログ - ゆき「亜人?」
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575: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/23(金) 23:21:36.30 ID:m50+y+cIO

田中の静止を気にもとめず、佐藤はその一体に向かって歩いていった。その一体も、佐藤の姿を認めた。先に死んだ“かれら”がそうしたように、歯を剥いて佐藤に噛みつこうとしていた。かあっ、かあっ、と舌を使わない音が口からもれる。歯を剥いたその一体には、すでにただの死体になった仲間の姿は見えないようだった。幽霊もすでに消滅していて、その一体の目には脅威らしきものはなにも見えなかった。

佐藤もその一体も、互いに正面から近づいていった。すり足のように足を動かす“かれら”と違い、佐藤の足取りはまっすぐ大股だった。なので、仕掛けるタイミングは佐藤のほうが早かった。佐藤の両手がその一体の頭に伸びた。右手は頭頂部を押さえ、左手で顎を下からがっちり掴んだ。まるでセメントで固められてしまったかのように、その一体の全身がピクリとも動かなくなった。佐藤の前腕に力を込められ、筋肉が膨らみ、手のひらを通じて頭部に多大な握力がかかった。顎を掴んでいる左手も同様で、開いた口は無理やり閉じられ、その一体は血と肉で汚れていた歯で自分の舌が潰され、赤い舌が靴が脱げ裸足になった右足に落ちた。

佐藤は、時計の針を調節するぜんまいを巻くときのような軽やかさで死者の首を捻り折ってしまった。ばきりという子供が木の枝を折って風景に属していたものを自分のものにしてしまう音がして、頚椎は完全に破壊されていた。“かれら”の肉体は腐りはしていなかったが、どこもかしこもかなり損傷していて、それは首の肉も例外ではなかった。頭部の上と下が一八〇度回転したとき、佐藤からみて首の左側の皮と血管とそのまわりの肉が裂けて開いた。まぎれもない素手の作業なのに、ナイフですばやく切ってしまったみたいに死者の首は開いていった。そのあと、肉体とつながっていた部分もジッパーを開いたみたいに裂けていって、死者の肉体はだらしなく重力に従って地面に倒れた。


佐藤「注射器を取ってきてくれるかい、田中君?」


佐藤は頭を捨て、一部始終を目撃したため梯子を下りたところで固まっている田中に向かっていった。


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