9:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 17:55:55.42 ID:FU69ie4a0
カリカリカリ
カリカリカリ
原稿用紙を文字が埋める。
紙の上に物語が描かれていく。
今僕が書いているのは、昔まだアンドロイドがいなくて、人間がいまよりもずっと多かったときの話。
そんな時代の恋物語。
誰も経験していないその時代に思いを馳せて頭の中を駆け巡っていくストーリーを文字に変え、原稿用紙の上に再現する。
それが僕の仕事であり趣味であり、生きがい。
楽しい楽しいたのし―――
「マスター」
僕の興奮はその言葉で打ち切られた。
「なんだよ」
僕は楽しみを邪魔された怒りから少し怒気を孕んで吐き出す。
「食事ができました」
「あぁ、後で食べに行くよ」
「料理が冷めてしまいます、今食べるのが」
「うるさいなぁっ!」
机をばんと叩いて立ち上がる。アンドロイドの目は少しも大きくならず、驚いてはいない。
「………かしこまりました」
「お前もうちょっと人間らしくできないのか!」
「それはロボット――」
「ロボット基本法に抵触するって言うんだろ!? 分かってるよっ! でもちょっとは人の気持ちを考えてくれよ! あぁ、わかんないよな。アンドロイドに心はないからなっ!」
「マスター、血圧が上昇」
「うるさい出て行け!」
「………かしこまりました」
アンドロイドが少し頭を下げて、出て行く。その顔は悲しんでも怒ってもいない。
だけど背後から見ると肩が落ちていたように見えたのはただの僕の思い込みだろう。
扉が閉まるのを確認すると僕は椅子に倒れこむようにして座る。
「あぁ、またやっちゃった。最低じゃないか………僕」
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