過去ログ - Iriya/Emotion into the sky
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12: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:09:17.23 ID:3u2qsoVw0
コックピットの縁に吊るしてある浅羽袋が目に止まり、鼻腔がじんわりと熱くなる。

唇を伝い、顎を滑って膝の上に落ちる血の雫。鉄の味、生の味、わたしは生きている。


13: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:10:21.83 ID:3u2qsoVw0
ジェイミーが死んで、ディーンにエンリコ、そしてエリカ……わたしはもう意味を喪失していた。

わたしはわたしを失ってしまっていた。ブラックマンタに搭乗して、出撃して、たった1人だけでソレと戦う日々

訓練のゲームと実戦、その頃のわたしには明確な境界が消失しかけていた。
以下略



14: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:11:29.52 ID:3u2qsoVw0
 ただただ時間だけが流れ、遂行されていった作戦の記録が、わたしが生きている証拠のように整然と並んでいる。

鼻血が溢れる頻度が増え、突然意識を失ってしまうこともあった。

不安はない。冗長気味の口調のエリカのおかげもあったかもしれない。
以下略



15: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:12:19.94 ID:3u2qsoVw0
「私たちはイリヤを待ってるよ。仲間はずれなんかにしない。でも、聞いてイリヤ。

イリヤも戦って死ぬの。戦って戦って、そして最後にあっ、てなったその瞬間に死ぬの。

自分から死んだりしちゃ、私たちとは違う形になってしまうから、それはダメ」
以下略



16: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:13:07.65 ID:3u2qsoVw0
『名前は?』

『いりや』

『――泳げないの?』
以下略



17: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:13:50.38 ID:3u2qsoVw0
 浅羽と出会ったあの日、わたしは、入里野加奈はもう一度生まれた。

浅羽の言葉が、わたしを再びつくりあげたのだと思う。

エリカたちとはどこかが違う、異なる種類の好きな人。それが浅羽。
以下略



18: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:14:30.35 ID:3u2qsoVw0
 それからのわたしは、生死をないがしろにすることができなくなっていった。

徐々にだけれど死に対して、どうしようもない恐怖を抱き始めてしまっていた。


19: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:15:17.74 ID:3u2qsoVw0
「浅羽を死なせたくない、でもわたしも死にたくない。生きたい」

 椎名にそう話したとき、なぜだか椎名が辛そうな顔をして、視線を逸し、目を伏せた。

「そうね、私だって、伊里野と浅羽くん……ううん、違う。みんなに生きてもらいたいわ」
以下略



20: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:16:23.08 ID:3u2qsoVw0
「ねえ、伊里野は浅羽くんが好き?」

 少し恥ずかしかったけど、わたしは頷く。

「猫は?」
以下略



21: ◆KM6w9UgQ1k[saga]
2016/03/22(火) 22:17:05.67 ID:3u2qsoVw0
「どうして、好きなの?」

「浅羽が、好きって言ったから」

「そっか……じゃあ猫と浅羽、ってちょっと愚問だったわね」
以下略



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