過去ログ - 「奇奇怪怪、全てを呑み込むこの街で」
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20:名無しNIPPER[saga]
2016/03/24(木) 21:47:54.14 ID:IK0XCEbx0
「……おっ、奴隷ショーか」

「ひっひっひ……」

奴隷市を訪れた二人は、奴隷ショーの人だかりを見て、足を止めました。

「さて、ト」

奥に居る調教人が、メガホンで大きな声を上げます。

「今から一人、どちらを殺すか……選べ!! 制限時間は30秒ダ!」

その声と共に、観客から大きな歓声が上がります。どうやら、エルフの一家がショーに出されているようですね。

見た感じですと、母親と妹……どちらを殺すか、青年に選ばせているようです。

丁度良い、と男は、老人に賭けを持ちかけました。

「俺は母親が殺される方に賭ける」

「ならワシは妹に賭けよう」

さて、どちらが勝つか。男は顎を撫でながら、震える青年に視線を向けます。調教人は、拳銃を雑に投げてよこしました。

青年はがしゃん、と言う音に、肩をびくりと縮み上がらせます。それはもう制限時間が無い事を表していました。

「へえ、拳銃渡していいのか?」

「自信の証じゃろうな。完全に自分に屈服している、と言う……パフォーマンスの一部じゃろう」

「なるほどねぇ」

青年は拳銃を握りしめたまま動きません。母親と妹は、どちらも震えながら涙を流しております。

自分たちの命など、観客を楽しませるものでしか無いと理解しているのですね。

此処は「イサクラ」。命の価値など、その辺に生えている雑草と同じで御座います。

「おぉイ!! 早くしロ!!」

調教人が罵声を浴びせます。青年は、震える手で拳銃を掴み――

――パァン! 甲高い銃声が響き渡りました。

「!」

「ほう……そう来たか」

銃弾は――青年の眉間を撃ちぬきました。

「な……なんで!! 何で逃げたの!? 卑怯者!」

「あ、ああああ……あんたなんか産まなきゃ――」

「ま、そういう事ダ」

銃声が二発。母親と妹の死体は、同時に倒れ落ちます。観客は、一層大きな歓声を上げました。

「……自殺を選んだか。まぁ賢いっちゃ賢いな」

「ひっひっひ……残念じゃったなぁ。今回は引き分けじゃ」

「次こそ勝つぜ……腹減ったな、何か食いに行こうぜ」

「おぉ、奢ってくれるのかの?」

「アホ」

血なまぐさい臭いが辺りに立ち込め、満月に雲がかかります。

これは「イサクラ」の、ありふれた光景。明日には皆、この一家の事など覚えちゃいません。

今宵の喧騒も、まだまだ始まったばかりで御座います。


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