過去ログ - 「奇奇怪怪、全てを呑み込むこの街で」
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26:名無しNIPPER[saga]
2016/03/25(金) 18:33:44.98 ID:RWFkivM90
ブローカーから紹介されて向かった臓器市では、それぞれの店がテントを張り、品物の値段を書いた札を並べています。何処にしようかと目移りする老人を背に、男は迷わず紫色のテントに入りました。

「俺だ」

「あぁ、旦那ですか。どうもどうも。心臓は今は品薄ですけど」

「今日はこの爺さんだ」

体中に縫い傷がある痩せこけた店主は、男を見るとにこやかな笑顔を作ります。

「ほぉおぉおぉ……これはまた随分と安いのぉ、粗悪品じゃなかろうな?」

「ああ、そう思うのも無理は無いけどねぇ」

店主はにやりと笑い、嬉しそうに話しました。

「実は、以前にウェアウルフの集団が、テロを初めましてね。おかげさまで、質の良い臓器が山ほど手に入ったんです」

「今月は「満月」の月だからな……奴らにとっちゃ、常に魔力を補充出来る天国だったろうよ」

「なぁるほどのお」

老人は子供のように目を輝かせ(見えているかは不明ですが)、店内をうろつきます。

「ってな訳で、このジジイの両目、移植してやってくれ」

「はいよ、コレは?」

店主は、親指と人差し指で、○印を作ります。前払いが当たり前の世界ですからね。

「……おい」

「ひっひっひ」

「――クソジジイめ!」

男は観念したかのように、金貨を差し出します。店主は「確かに」と言い残すと、奥の方へ下がりました。

戻ってきた店主の手には、氷漬けにされたウェアウルフの両目がありました。特殊な氷魔法で、鮮度を保ったまま保管してあるようです。

「えーと、「機能」はどうします? その分の魔力は出してもらいますけど」

「ああ、このジジイには必要無い。余計に変なもんを探し出す」

「ワシにもつけとくれぇ」

「うるせぇ! 金出さねえぞ!」

なるほど……どうやら、男の「嗅覚」は、ウェアウルフの心臓を移植した際に宿ったもののようですね。

莫大な魔力を込める事で、元の所有者の「能力」の欠片も受け継ぐ――表の世界では禁止されている魔法ですが、「イサクラ」には関係ありません。

店主は老人を奥の方へと案内します。男は退屈そうに、持っていた煙草に火をつけるのでした。


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