過去ログ - 「奇奇怪怪、全てを呑み込むこの街で」
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27:名無しNIPPER[saga]
2016/03/25(金) 20:35:08.45 ID:RWFkivM90
「ひっひっひ、お目目がぱっちりじゃあ〜」

「目を見開くな、気色悪い」

上機嫌な老人と共に、男はすっかり暗くなった道を進みます。此処一帯はゴーストタウンのようで、夜でも人気がありません。

男は暗くても平気ですが、老人が移植したての目を堪能したい、と言うので、仕方なくウィルオウィスプをランプ代わりにしています。

「そもそも、どうせ擬態解いたら、またあの気色悪い目になるんだろうが」

「ひひひ……解いてみせようか?」

「やめろ。虫が五月蠅くて敵わん」

ひひひひひっ、と甲高い笑い声をあげた老人は、辺りをきょろきょろと見渡します。

「……おおおお、よぉ〜く見えるのぉ、お主らの目玉は」

「!」

そう声を上げた瞬間、周りから何匹もの大きな獣が老人達を取り囲みました。男と同じほどの体格で、色は茶色が銀色など、個体によってさまざまです。

「ウェアウルフ……まだ残ってたのか」

「グルルルル……満月が我らに力を与える!! お前ら、我らの身体を移植しているな!! 殺してやる!」

その中でも一際大きい、リーダー格の黒いウェアウルフが男に向かって声を荒げます。それに対し、さっさと帰りたいんだがな、と男は面倒くさげに目を細めます。

「……力与えられてるくせに、壊滅してんじゃねーか」

男がそう言い放った瞬間、ウェアウルフ達は一斉に飛び掛かりました。

男は瞬時にウィルオウィスプを召喚し、炎の陣を作ってそれを防ぎます。

「ひっひっひ……ワシも手伝ってやろうか? 久しぶりに元の姿に戻りたいしのぅ」

「絶対にやめろ。あんたが暴れると洒落にならん」

「ネクロマンサーか……小癪な術を! だが、こいつはどうかな!?」

「!」

一瞬反応が遅れましたが、男は地中から襲い掛かってきたそれを回避します。

「百千ムカデか」

百千ムカデと呼ばれたそれは、大きなムカデのモンスターでした。サイズは10メートルほど。なかなかの大きさです。黒い甲殻は月光で照らされ、牙をかちかちと鳴らしています。

どうやら、このモンスターを手懐けていたおかげで、彼らは生き延びる事が出来たようですね。

「ちまちま潰すのは面倒だな……一気に終わらせてやる」

男はそう言うと、真の姿を解き放ちました。辺りが炎で明るく照らされます。

「……あ……!?」

次の瞬間、百千ムカデが豪炎に包まれ、黒コゲになって倒れました。辺りに焦げ臭い臭いが充満します。

「き、聞いてねえぞ、こんなヤベェのがこの街にいるなんて――」

「そうかい」

大きな翼を羽ばたかせ、高く飛びあがった男は、凄まじい爆炎で一気に真下を焼き払いました。

煙が晴れると、そこには無傷の老人が、相変わらずの様子で笑っています。

「ひっひっひ……ワシを殺せなくて残念じゃったのぉ」

「あ、ごっめーん。うっかり巻きこんじまったー……ちっ」

棒読みでその言葉を口にした男は、全くのダメージが入っていない事に舌打ちをします。

「さすがは無敵の怪物、ジャバウォック様じゃのぅ……ひっひっひ」

「……てめえが言うんじゃねえ、クソジジイめ」

人の姿に戻った男は、不満げに歩き出します。

「……ああ、そういや、焼かずに臓器売れば良かったな」

その後ろでは、満月の光が、ウェアウルフ達の死体を妖しく照らしているのでした。


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